土方歳三と云う男。

考察と云っても、いろいろ今さらなんですけども――今、“明治維新をひっくり返せ!”脳外シュミレーション(まァ、他人の脳内でシュミレーションやってると云うか……どうやら、完全にはひっくり返らないっぽいのですが)中なので、それ絡みで思ったことなど。


どうにも不思議だなァと思うのが、何であの男、そんなにカリスマっぽく仰がれてたんだろうと云うこと。
いや、まァ箱館戦争なんかではね、わかるんですよ一応ね、それなりにカッコよかったんだろうなァ、カッコつけ頑張ってたろうしなァ、ってのがね。
でもさァ、何か、崎さん(=山崎……)とか島田とか、古株組はまァある程度普段の顔も見てたわけで、そうすると、いくら何でも四六時中カッコつけてたわけじゃああるめェと思うわけで、そうするとさ――じゃあ何で崎さん、鬼のこと尊敬してたのよ、って云う。しかも、崎さんも島田も年上じゃん!


これが勝さんなら……別にぐだぐだしてても、ぐあぁと暴れても、好きだし使われたいと思ってる(まぁ、心酔してると云ってもいい、かな)ので、あんまり“好き”と云う気持ちのベクトル自体に差し障りはないのですが……
相手、鬼だぜ? 勝さんみたいに、目線下げて話してくれたりとかしないぞ?
それで何で、新興宗教みたいに熱狂できるのかがわからん……
つーか、ぶっちゃけ平時の上司としては、大鳥さんの方が良かったんじゃないのかな? そりゃあ、戦うのは鬼の方が巧かったかも知れないけど、戦前の軍隊式だもんなァ、ある種。


つーか、まず鬼って、人の作った規則には反抗するけど、自分の作った規則は絶対守らせる感じだもん。平気で大小差して歩いたり、侍髷にしたりしたと思うけど、局中法度を破ったものには切腹っては徹底してたしね。
基本的に反骨精神のかたまりなので、自分で頭下げようと思った相手以外には、結構裏で舌出してたりしてたと思う。
それは、ある意味普通のひとだったと思うんですけども、同時にやっぱりどっか苛烈だったんだろうなァ、頭は悪くなかったんだろう(そうか?)な、仕事はできたんだと思います。あと、喧嘩も強かったんだろうね、新撰組副長だからね、それはね。


そう云や、沖田番に“鬼は何だかんだ云って、恐怖政治系だから”と云われましたが、うん、そうね、否定できねェわ。つーか、あの局中法度自体が、恐怖政治的なもんだもんなァ。まぁ、あの“切腹”ってのは、あくまでも脅しのつもりだったと思うんだけどね、はじめはね。
つーか何、あれは、もしや皆さん舐めてたのか? 局中法度に背いても、なぁなぁでいけると思ってたのか? そりゃあね、なぁなぁなところがなかったとは云わないが、でもやるったらやりますよ、鬼だもん。仏革命で、ロベスピエールも云ってるでしょ、「徳なくして恐怖は忌まわしく、恐怖なくして徳は無力だ」って。“徳”を“士道”にすると、近い感じなんじゃないかと勝手に思ってるんですけど……どうかな?


ところで、この間、うちの山南役(と云うのがいるのです)と話していたのですが。
山南さんは皮の白い饅頭(漉し餡)みたいな感じだよねと云う。一見白くて、割ると腹が黒いんだよ。“栗が入ってるので、真っ黒ではない”とは、山南役の言。
総司は黄粉のおはぎ――ちょっと白っぽく見えて、すこし掘ると白く、もっと中は真っ黒。ちなみに鬼は、温泉饅頭なんだそうだ――がわも黒っぽく、中も黒いんだって。いや、普通のおはぎ(中は白い)だと思うけど、つーか白までいかなくてもいいけど、そこまで黒くはないよ! 山南さんの方が黒いって、絶対!
何つーか、低次元の争いだな……


† † † † †


そうそう。
早売り(ホントは発売協定があるので、明日売りじゃなきゃ駄目なのよん)の文春文庫『歳三 往きてまた』(秋山香乃)を買ったので、その感想を。
何か、人物の設定が――キャラは立ってるのかも知れないが、いささか違和感を禁じ得ません。一ちゃんの“涼やかな声音”、大鳥さんのキャラ、鬼の性格はもとよりかっちゃんの性格(何で皆、あんないい人にしたがるかな/怒)、あと勝さんは冷酷な顔は見せません! どの勝さんだそれは!
人物の性格設定が、何かすごく鬼に贔屓過ぎて、正直なんかもう……
つーかね、春日さん(左衛門ね)の書かれ方もね……流石にあれはちょっとね、そりゃあ上司には持ちたくない人だったけど、あそこまで理不尽に文句云う人でもないよって云うのが、こう。
新撰組関係の小説って、ひどく肩入れされてるか、ひどく外道に書かれてるかの2択だよなァ……


ええ、私、電波ですよ。でも、やっぱり誰かをひどく持ち上げるってのは(好悪の問題でなければ)危ない話だなァとは思います。
鬼だって人間だもん、そりゃ悪いところだって、ぐだぐだなところだって、卑怯なところだってあるさ。
そう云う人間だって自覚があるところに、新興宗教の教祖様みたいに担がれちゃったら、やっぱりそれは鬼自身怖かったと思うんだけど。自分の虚像が一人歩きしてってるみたいな。
宇都宮での戦線離脱後、大鳥さんの下につきたくないって抜けてきた連中がいたってのは、ぱっと聞いた感じいい話かもだけど、そういう意味で歓迎できる話ではないし、第一、実際組織を運営する段になると、すごい問題のあることだと思いますよ。
やっぱりね、鬼はそう云う意味では、下っ端(の中の統率者、所謂中間管理職的な)なんだと思います。何て云うんですか、上の人が考えたプランに基づいて動く、実働部隊の隊長みたいな? 最終的な責任は、会津か幕府の偉い人に持ってもらっちゃえ、みたいな。
そう云う意味では、ひとりでいろんな矢面に立った勝さんと、上に絶えず誰かのいた鬼とでは、やっぱり背負ってるものが違うので、素直に勝さんの方が凄いと思うんだけど、これって少数意見かしら?


ところで、今日、BS2でまた『壬生義士伝』やってましたが、佐藤浩市って、一ちゃんの役だったのね! 私はてっきり鬼の役だと思ってました。その方があの語りとかしっくりくるわ。
吉村さんは――中井喜一は好き(佐藤浩市との共演って、NHKの『突然、嵐のように』って弁護士ドラマのイメージが強いんですが……このドラマ好きだったなァ)ですが、吉村さんのイメージはちょっと違うな。
浅田次郎新撰組は、『壬生義士伝』と『輪違屋糸里』が出てますけど、イマイチ読む気がしない――あくまでも“浅田次郎の”新撰組だもんなァ。
やっぱ、一番面白いのは、完全に資料中心の歴史書だよねェ……