2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

神さまの左手 8

バルダッサーレ・タッコーネの戯曲は、題名を『ダナエ』と云い、その名のとおり、ギリシア神話のダナエに想を得た物語だった。 「娘の息子に殺される」と云う神託を受けたアルゴス王アクリシオスが、神託の成就を恐れ、娘ダナエを塔に閉じこめる。だが、黄金…

ここでちょこっと。

ここ最近買った新撰組関連の小説etc.のことなど。ほとんどは、端書きでも書いてますが…… メモ的なかんじで。 「散華 土方歳三」 (萩尾農 新人物往来社) 新撰組系腐女子のバイブル? どこぞのサイトで“商業であんまり同人じみたのやられても引く”と云う評を読…

北辺の星辰 31

翌十月二十六日、歳三率いる間道隊は、湯ノ川を発し、五稜郭へ入場することとなった。 途中、民家を探索し、箱館府兵のものと思しき銃器を押収、そののち、再び兵を五稜郭へと出立させたのだが。 触れを出させたにも拘らず、先鋒が動こうとしない。 この日の…

小噺・千客万来 其の弐

「土方さん」 「何でェ」 「いやァ、こないだの朔の日ァ、すげェ騒ぎでしたねェ」 「影斬りがか? ――あァ、御来客がか」 「えェ。まさかねェ、俺だって、斬った影ん中から、裸の男がふたりも、ごろっと出てこようたァ思いませんもん。お蔭で厭なもんまで見ち…

神さまの左手 7

スフォルツェコの城門へは、歩いてすぐに行きつける。 とは云え、大荷物のサライにとっては、その短い道のりも結構なものに感じられた。早足で歩くレオナルドに遅れぬよう、ほとんど小走りであったから、かかった時間はさほどではなかったはずだけれど。 レ…

北辺の星辰 30

開陽丸での合議とも云えぬ合議ののち、蝦夷地への上陸は十月二十日、まずは選ばれた三十名ほどのものが行うことに決まった。 一斉に上陸する案もなくはなかったのだが、このあたりにどれほどの集落が存在しているかもわからぬうちに上陸すれば、最悪、戦なら…