2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

北辺の星辰 7

幕軍総督・大鳥圭介率いる中・後軍は、四月二十日に宇都宮城下に入ってきた。 歳三は、秋月登之助や、宇都宮城下の寺から救出した備中松山藩主・板倉勝静とその子息・万之助らとともに、大鳥たちを出迎えた。 「――よもや、先鋒軍のみで、宇都宮を落とすとは…

泡沫

――ひどく懐かしい夢を見ていた。 遠い入日を追いかけるように、歩いていた。 遠出からの帰り道。 先を行く背中に置いていかれないように、必死に足を動かして――肉刺が出来ても、食い込んだ草鞋に、足指が擦り剥けても、絶対に弱音を吐くまいと唇をかみ締めた…

めぐり逢いて 14

副長の率いる額兵隊、陸軍隊から成る一軍は、二十二日に砂原村、二十三日に鹿部村、二十四日には川汲峠と、特段遭遇する敵もなく、順当に海沿いの道を進軍していた。 隊のものは誰しもが、このまま何ごともなく五稜郭に入城できるものと、漠然とではあるが、…

小噺・市村鉄之助の儀

「……土方さん、そう云や思い出したんですけど」 「何でェ」 「市村君いたでしょう、あんたの小姓だった。あの子、今どうしてるんですかねェ?」 「さァなァ。噂じゃあ、俺が日野へ使いにやった後、しばらく経ってから、大垣の実家へ帰ったってェ聞いたが――そ…

お気づきかもしれませんが。

右の「リンク集」のところに、本館のリンクを追加いたしました。 今日から国立博物館で『受胎告知』展開催なので、それにあわせて(?)本館の「History」に新撰組のログと、ミケランジェロの話をUPしたのです。 と云っても、鉄ちゃんの話は未UPですが――ちょっ…

北辺の星辰 6

幕軍およそ二千の兵は、四月十二日に鴻之台を出立、大鳥の率いる中・後軍は、街道筋を避けて北上する経路を取ったが、歳三たちの先鋒隊は、薩長軍の目を晦ますためもあって、街道筋を進むことになっていた。 十三日には利根川の渡しである布施に到着、河水の…

めぐり逢いて 13

九月二十四日、新撰組は、仙台城下から里村島に移り、仏人将校ブリュネに行軍の伝習を受けたのち、幕軍本隊とともに石巻へと移った。 そこでやや滞留して、渡航の艦船――大江丸――に乗り込んだのは、十月十日になってのことだった。 鉄之助にとっては、二度目…

小噺・衆道談義

※総司に夢を見たい方は、今回の小噺はお読みにならないで下さい。 「土方さん、ちょっと訊きてェんですけども」 「何でェ」 「昔、夜に俺の枕元に、隊士がひとりすわってて、えらいびびったことがあったんですけど、あれァ何だったんですかねェ」 「あァ?」…

北辺の星辰 5

四月十一日、歳三は、六人の隊士たちを連れて、鴻之台へと赴いた。 かれらが到着したときには、鴻之台の総寧寺には、既に伝習隊の兵士たちや、江戸の浪士組などが続々と結集してきていた。 「やぁ、土方さん、お待ちしておりました」 伝習第一隊長の秋月登之…

資料のこと・改訂版。

ちょこっと(……そうか?)資料が増えたので、この辺でまた一覧など。これで買い収め、にしたいなぁ…… タイトル、著者名、出版社名、ISBN(面倒なので10桁の方)の順で。 「新選組始末記」 (子母澤寛 中公文庫 し 15-10) 4122027586 「新選組遺聞」 (子母澤寛 中…

めぐり逢いて 12

隊士が半減し、新撰組の存亡を危ぶむ声が隊内から出はじめたころ、副長は、また唐突に、新しい隊士を迎え入れたことを、鉄之助に告げてきた。 「桑名、唐津、松山の藩士どもが、藩主への随行を許されずに、どうしたものかと考えあぐねていたようなんでな、新…