2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

北辺の星辰 26

松本良順医師と再会したのは、それから幾日も経たぬうちのことだった。 幕軍は松島へと転陣した後だったが、歳三は、仙台藩との事務連絡や、降伏者についての申し送りなどもあって、未だ仙台城下に留まっていたのだ。 そこへ、米沢から松本医師が訪ねてきた―…

小噺・春宵一刻値千金

「あァ、花見の宴も終わっちまいましたねェ」 「何でェ、総司、えらく残念そうじゃねェか」 「あたりめェでしょう、俺ァ、接待に必死で、呑み食いするどこの話じゃあなかったんですぜ?」 「まァ、主賓ァ水戸の御隠居だからなァ。仕方ねェだろう、おめェらと…

神さまの左手 2

何だ、この人。 ジャコモの率直な感想がそれだった。 ミラノへ到着して、早半月。 “神さま”だと思った人、すなわち画家であるレオナルド・ダ・ヴィンチと、ミラノで暮しはじめてから半月が経った。 こちらへ来てからしみじみ実感したのだが、どうやらレオナ…

北辺の星辰 25

歳三の許を訪れたのは、桑名藩士・森常吉と云う男だった。 森は、京都所司代で公用人を務めた人物で、年齢も歳三よりはかなり上――おそらく十ほどは上――であろうと思われたが、その立場などなかったような腰の低さで、頭を垂れてきた。 「お久しゅうございま…

小噺・閑話休題 其の三

「おう、邪魔するぜ高杉」 「あれ、土方さん」 「何だ、総司、来てたのかよ」 「あんたが打ち合わせに来れねェってんで、代わりによこされたんでしょうが。……まったく、来るんなら、俺ァ帰らしてもらいますぜ」 「まァそう云うなって(云いながら、徳利を見せ…

神さまの左手 1

これは本当に、いい拾いものをした。 フィレンツェ出身の画家・レオナルド・ダ・ヴィンチは、ミラノへの帰途の荷馬車の上で、こっそりとほくそ笑んだ。 ミラノの領主、ルドヴィコ・スフォルッツァ、通称イル・モーロの命により、パヴィアの街にドゥオモ建設…

北辺の星辰 24

蝦夷地に渡ると決まってからは、松平太郎の動きは迅速だった。 まずは、各艦船の収容可能人数を割り出し、渡航可能なおおよその人数――それは、千人ばかりになるだろうとの話だった――をはじき出す。 「千人と云うと、現在の幕軍のほぼ半分ではありませんか」 …

小噺 人物表。

いや、冥界再編(笑)も進んでますので、この辺でいっちょ人物のおさらいなど。 やー、倒幕佐幕入り乱れてますよ〜。 人数が多くて重いので、畳んでおきます。

小噺・一触即発

「おう」 「あれ、土方さん」 「そんななりして、これから出かけんのか」 「えェ、これから呑みなんでさァ」 「呑み? 誰とだ?」 「や、最近、“一触即発会”てェのを作ったんで、それの呑みでさァ。本当は今日で二回目なんですけど」 「“本当は”ってなァ何だ…

同居バトン ED

数日後、土方歳三と沖田総司は、それぞれの時代に帰っていった――ようやっと。 ――あァ、清々した。 などと云うと、鬼や総司を好きな、元&現同僚諸嬢に怒られてしまいそうだが。 しかし、実際に連中と暮らしてみれば、そんな甘いことは云ってなどいられない。…