2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

小噺・書簡四方山

「土方さん、そろそろ今年も仕舞いですねぇ」 「あァ、どうも、正月ってぇ気分にゃほど遠いがな」 「そりゃあ、あんた、身の回りが片付いてねぇからじゃあねぇんですかい」 「やかましいわ! ……俺は忙しいんだ。総司、おめぇ暇そうにしてるんなら、ちったぁ…

闇路

血の跳ねた衣を脱いで、新しいものに換える。 顔を拭い、髪を整え、今しがたの血の臭いを、この身から拭い去り。 身を清めるのは、これから隊士たちに語らねばならないからだ。今日のこの仕置きの意味を、はっきりと示してやらねばならないからだ。 ふと振り…

めぐり逢いて 6

副長は、四月四日、密かに江戸へ立ち戻り、勝海舟を訪ねていた。 その詳しい会談の内容を、鉄之助は知らない。ただ、副長からは、「局長の助命を請願するため」とのみ聞いていた。 副長に従うのは、二番隊伍長の島田魁、中島登、畠山芳次郎、沢忠輔、松沢乙…

芹さんの話とか。

この間、何かの本で読んだのですが、芹沢鴨さん、梅毒に罹ってたとか云う話があるそうで。 まぁ、あの時代、性病に罹ってる人間はすごい多かったらしく、その中でも梅毒は、結構メジャーな病だったらしい――ルネサンス期のイタリアと似てますね(笑)。 で、突…

小噺・新撰組四方山

「土方さん」 「何でェ」 「ほら、昔、佐久間象山の息子いたでしょう、恪なんとか云う名前の」 「あァ、三浦敬之助か、おめぇが鼻ぁ大根おろしにした」 「あァ、そう云やそんな名前でしたっけね。そうそう、あれですよ。鼻ァ真っ赤だったから、紅葉おろしで…

艶女

久々の非番の日、沖田総司は、平服で屯所を出る。 隣りには、やはり平服の副長・土方歳三。 「お出かけですか」 すれ違う隊士の声に、 「ええ、ちょっと、蕎麦でも食いに」 などと頭を下げる。 総司はにこやかだが、横を歩く土方は仏頂面だ。隊士が怯えるか…

めぐり逢いて 5

局長は、甲州の敗北にやや気弱になっていたようだったが、それでも気を取り直したものか、江戸の辰巳、五兵衛新田に拠って、再び隊士を集めようとした。 あるいはそれは、副長の助言によるものであったのかも知れない。副長は、ともかくも組織を守ろうとして…

めぐり逢いて 4

敗走した新撰組からは、ますます隊士が脱走するようになった。 勘定方として江戸に残っていた、鉄之助の兄・辰之助も、そのひとりであった。 「大垣へ帰ろう、鉄」 兄は、鉄之助の目を見つめて、そう云った。 甲州へ出向いていた、局長、副長が江戸に帰参し…

相馬主計のこと。

うおぉぉ、何か考えてたら、ぐるぐるしてきちゃったんですけども、相馬主計のこと。 何か、この人貧乏籤引いてるよなぁと思うんだけど、何で新撰組隊長なんか引き受けたんだろう……いや、そう云うキャラだと云ってしまえばそれまでなんだけど、何で切腹までし…

小噺・勤皇志士連中

「土方さん」 「何だ」 「そう云や思い出したんですけど」 「あァ」 「ほら、あんたが気に入って通ってた、四条河原あたりの蕎麦屋、あったでしょう」 「どれだよ」 「河道屋とか云うとこですよ」 「あァ、ありゃ、麩屋町んとこじゃねぇか。しかも三条だ。………

めぐり逢いて 3

原田・永倉の離脱について、鉄之助は、詳しいことは何も知らない。 隊内で噂がたって、甲州で、ふたりが新撰組を抜けたと聞いただけだ。 何も、聞こえてはこなかった、局長の暴言にふたりが激怒し、もの別れに終わったと云うこと以外は――そうして、そのやり…

小噺・池田屋事件

「土方さん」 「あぁン?」 「俺、池田屋のあん時、昏倒したじゃないですか」 「あァ、してたな」 「あれ、最近の小説とかじゃ、労咳の発作で、喀血して倒れたとか云われてるみたいなんですけど」 「……(最近の小説って、どこでどう読んだんだ)……あァ、そうら…

めぐり逢いて 2

だが、そんな穏やかな時間など、実際にはほとんどありはしなかった。 鉄之助が入隊してすぐ、明けて慶応四年、鳥羽・伏見の戦いがあった。 戦力的には、幕軍の圧倒的優位にはじまったはずのこの戦いは、しかし、薩長連合軍のがむしゃらな戦いぶりと、それに…

ブログ名変えてみました。

ええ、ちょっと欲が出てきたので(笑)。 ほとんど、自分用の「忘備録」ってカンジの命名ですが。だって、振られたネタを書いてるだけのブログだしね。 そう云や、菅野文さんの『北走新選組』を買い直しました――あんなこんなな副長を書いた後だからか、麗しい“…

新撰組の拷問について。

いや、何かそう云うことを相方・門馬と話していたのですが。 新撰組の、つーか副長の拷問って、実はぬるいよね、っていう。 いや、例の有名な古高さんの一件ですが。 だってさ、世界史とかの『拷問全書』とか読むと、凄いのたくさんありますよ? 八つ裂きと…

時の環の彼方で

「――あ、来た来た」 「先輩、おそいっすーっ!」 待ち合わせの時計の下で、ふたりがこちらへ手を振った。 冬の冴えた空気の中、街路樹にまかれたイルミネーションが、鮮やかに見える。 「悪ぃ、待たせた!」 そう云って駆け寄ると、背の高い後輩は、にっこり…

土方歳三は激しく後悔していた。 何を? この“打ち合わせ”をやると承諾してしまったことを、だ。 “打ち合わせ”の相手は武田観柳斎、出雲出身の新撰組参謀である。 この“打ち合わせ”、局長・近藤勇が、武田や伊東甲子太郎などと安芸へゆくので、それに伴うあ…

考察、と云うほどでもないのですが。 ちょっといろいろ考えてたら、ついダークな気分に…… 山南さん斬るって云い出したの誰だったんだよー。つーか、どっち!? 何か見えるような気がするんだけど、きっと局長は、斬らせるつもりだけど、絶対に自分からは云い出…

何と!

ところで、先生の「受胎告知」が来年3月にくるらしいですね! 国立博物館だって! チケットは頼めば手に入るだろうから、頑張って見に行こう! 他の展示物が何になるのかが気になるわ…… しかし、その前に、ウフィッツィで見てきちゃうとは思うんだけどね……

めぐり逢いて 1

「君、齢を偽っているだろう」 云われて、びくりと身が縮むのを覚えた。 京都、伏見の奉行所のうち。 美濃大垣の家を、兄とともに飛び出して、新撰組の隊士募集に応じたのだが。 「十九には見えん。――幼すぎる」 目の前の床几に坐るひとは、じろりとこちらを…