2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

半色 二

成親に連れられてやってきたのは、内裏の奥、後宮の一角にある、とある局であった。 この局の主である女房と浅からぬ縁があるのだと、成親は、密やかな笑みを浮かべて云ったものだが――その“縁”とは、すなわち、この女房が後宮に上がる前に、かれがかの女のも…

北辺の星辰 52

三月二十一日、幕府海軍の回天、蟠龍、高雄の三隻は、ストーンウォールこと甲鉄艦を含めた南軍の艦隊が停泊する、南部藩領宮古港へ向けて出港した。 歳三の乗る回天には、海軍奉行・荒井郁之助、仏人海軍士官・ニコール、軍監として相馬主計と野村利三郎、大…

神さまの左手 27

コモ湖についた翌日から、レオナルドは精力的に湖畔を歩き回った。 サライとしては、せっかくの保養地であるのだし、少々のんびりしたい気分があったのだが――滞在期間が限られている上に短いときているのだから、一分一秒たりとも無駄にはできない、とレオナ…

三浦半島散歩

こないだから行きたい行きたいと思っていたので、行ってきました、三浦半島。 っても源平中心と云うわけではあんまりなく、浦賀と鎌倉と云う、源平+幕末折衷的なカンジ。 えーと、8時ちょい過ぎに、沖田番ちの最寄り駅で合流。→新宿→湘南新宿ラインで横浜→…

半色 一

濃紫と薄紫の間のいろを、“半色”と呼ぶのだと云う。濃くも薄くもない、半端な色と云う意味であるのだと。 まるで、己のようではないか――平重盛はそう考えて、小裂をひねり回しながら、小さく吐息した。 重盛は、武門のほまれ高き伊勢平氏の人間である。祖父…