2008-01-01から1年間の記事一覧

資料のこと 四訂。

と云うわけで、予告どおり資料一覧を。 前回(去年の10月)から、また増えてるよ…… タイトル、著者名、出版社名、ISBN(主に10桁、最近のは13桁)の順で。 「新選組始末記」 (子母澤寛 中公文庫 し 15-10) 4122027586 「新選組遺聞」 (子母澤寛 中公文庫 し 15-1…

榧の追憶 前篇

稽古場に、いつもの顔が揃っていないことに気づき、沖田惣次郎は、そっと溜息をついた。 ――面倒くさい。 正直に云えば、それだけのことだった。 あの男がここに来ていれば、用事はいっぺんに片付いたと云うのに―― ――出稽古に行くんなら、あいつの様子を見て…

北辺の星辰 36

城下を移動し、松前城の背後へと回りこむ。 海岸方面からは、蟠龍、回天からの砲撃の音、それに応戦する松山城内からの、あるいは海辺に設けられている築山砲台からの砲声が響いてくるが――城下でも、歳三の進軍している裏手側は、まったく静かなものだった。…

小噺・ひとりかくれんぼ

「あれ、土方さん、その妙な皮ァ何なんで?」 「これか? こいつァ、あれだ、今朝目が醒めたら、俺の枕元にあったのさ。しかも、何でか知らねェが、でっけェ刃物と一緒にな」 「はァ」 「中にァ米が詰めてあったし、何なんだろうな、これァ――こう云う“ぬいぐ…

神さまの左手 12

ともかくも、馬をどうにかせねばならぬ。 レオナルドの頭を悩ませていたのは、まったくこの一点に尽きた。 と云うよりも、馬がはかどらないので、それから逃避しようにかかっていた、と云ってもいいだろう。 騎馬像のバランスが問題なのだが、何をどう考えて…

北辺の星辰 35

十一月一日、歳三率いる松前攻略軍は、知内に宿陣した。 先鋒、本隊合わせて八百を超える大軍である、小さな集落は、幕軍の兵士で溢れかえった。 ともかくも、無事に宿営することができるとわかって、歳三は、正直胸をなで下ろしていた。この行軍中も、雪は…

小噺・狐談義

「……なァ、総司」 「何ですかい、土方さん」 「いっつも思うんだがよ、俺ァ狐キツネってェ云われるじゃねェか」 「えェ、まァそうですねェ」 「でもな、思うんだけどよ、俺と山南さんじゃあ、そんなに腹黒さァ変わんねェよな?」 「南さんァ、黒かァねェです…

幕末長州紀行 その4

あるいは、下関・萩、高杉晋作追っかけ行。 お暇と興味がおありの方は、続きからどうぞ〜。

幕末長州紀行 その3

あるいは、下関・萩、高杉晋作追っかけ行。 お暇と興味がおありの方は、続きからどうぞ〜。

幕末長州紀行 その2

あるいは、下関・萩、高杉晋作追っかけ行。 お暇と興味がおありの方は、下からどうぞ〜。

幕末長州紀行 その1

あるいは、下関・萩、高杉晋作追っかけ行。 お暇と興味がおありの方は、下からどうぞ〜。

神さまの左手 11

祝祭が終わってしばらくの間、レオナルドは、例の“騎馬像”に取り掛かるでもなく、ややだらけた日々を送っていた。 朝遅くなってから起きてきては、以前描いていたらしき素描を丹念に描き直してみたり――但し、依頼があってのものではないので、まったくのお遊…

Go to D.M.C.!

……阿呆な小ネタです。以前のバンドネタくらい阿呆。 † † † † † 桂小五郎は、ちょっと内気な長州藩士。 背は高く、イケメンで、剣も強く弁も立つとなれば、いろいろと持て囃されてもおかしくはなかったが、いかんせん、桂はとにかく臆病だった。 江戸でも名高…

北辺の星辰 34

五稜郭を出立した歳三たちは、箱館から遠からぬ有川で、まずは最初の宿陣をすることになった。 と云うのも、松平からの命で、この有川で、江戸より帰還した渋谷十郎なる松前藩士らと、会談を持つことになっていたからだ。 渋谷ら七名は、江戸滞在中に抗戦派…

小噺・茶の湯四方山

「いやァ、土方さん、こないだの月見はすごかったですねェ」 「あ? 仲秋の名月のことかよ? ……すごいったって、俺ァ、阿部さんと井伊のと一緒に、ひたすら茶ァ飲んでただけなんだがな?」 「あァ、彦にゃんァ、観月の茶ァ、えらく楽しみにしてましたからね…

神さまの左手 10

舞台の上は、光に満ちていた。 色鮮やかな衣に身を包んだ役者たち、それを照らす数知れぬ蝋燭の焔、その焔の光を跳ね返す数多の飾り―― 確かに、それは天国の写し絵と云っても良かっただろう。 ダナエ役の役者が細い声で、ユピテル役の役者が朗々と、台詞を曲…

北辺の星辰 33

五稜郭入城の翌々日、すなわち十月二十八日、歳三は、額兵隊、陸軍隊を率いて、松前攻略に赴くことになった。 先鋒の彰義隊は、既に前日、松前に向かって出立している。歳三率いる本隊には、砲兵及び工兵が随従し、後軍は衝鋒隊の半数が、副長の永井蠖伸斎を…

小噺・井伊直弼の儀

「おう、総司、これから井伊ののとこにいくのか?」 「えェ、まァ。彦にゃん、背中やって、まだ自由に動けねェですからねェ。あと、暗殺しにくる輩のこともありますし、ちょっくら行ってきまさァ」 「おう、頼んだぜ。……井伊のァ、ちったァ良くなってんのか…

神さまの左手 9

復活祭が過ぎて、しばらくが過ぎた一月の半ば、イル・モーロとベアトリーチェ・デステ、そしてアルフォンソ・デステとアンナ・スフォルッツァのふた組の婚礼の儀が、盛大に行われた。 サライは、画家の弟子と云う身分のため、公の式に出ることはできなかった…

北辺の星辰 32

「松前を攻めて戴きたいのだ、土方さん」 五稜郭入城を果たして、榎本に報告に行くと、かれから返ってきたのはこのような言葉だった。 「正気ですか」 と、思わず云ってしまったのは、雪中行軍を終えたばかりの陸軍兵のことが念頭にあったからだ。 蝦夷地上…

小噺・阿部正弘の儀

「おう、総司。何でェ、髪湿気ってやがるな。行水でもしたのかよ?」 「違いますよ。これァ、先刻子どもらと水遊びしてたら濡れちまったんでさァ」 「あァ、それで先刻から、子どもらのきゃわきゃわ云うのが聞こえてたのか」 「えェ、まァ。でも、濡れちまっ…

ちょこっとお散歩。

えー、不意に思い立ったので、沖田番を引き連れて、奥多摩っつーか青梅まで行ってきました。 や、何か川遊び的なことをしたかったので。 青梅あたりは、昨年に親とドライブして以来なので、超↑久しぶり。っても、今回は電車を使っての道ですが。 天気は良か…

神さまの左手 8

バルダッサーレ・タッコーネの戯曲は、題名を『ダナエ』と云い、その名のとおり、ギリシア神話のダナエに想を得た物語だった。 「娘の息子に殺される」と云う神託を受けたアルゴス王アクリシオスが、神託の成就を恐れ、娘ダナエを塔に閉じこめる。だが、黄金…

ここでちょこっと。

ここ最近買った新撰組関連の小説etc.のことなど。ほとんどは、端書きでも書いてますが…… メモ的なかんじで。 「散華 土方歳三」 (萩尾農 新人物往来社) 新撰組系腐女子のバイブル? どこぞのサイトで“商業であんまり同人じみたのやられても引く”と云う評を読…

北辺の星辰 31

翌十月二十六日、歳三率いる間道隊は、湯ノ川を発し、五稜郭へ入場することとなった。 途中、民家を探索し、箱館府兵のものと思しき銃器を押収、そののち、再び兵を五稜郭へと出立させたのだが。 触れを出させたにも拘らず、先鋒が動こうとしない。 この日の…

小噺・千客万来 其の弐

「土方さん」 「何でェ」 「いやァ、こないだの朔の日ァ、すげェ騒ぎでしたねェ」 「影斬りがか? ――あァ、御来客がか」 「えェ。まさかねェ、俺だって、斬った影ん中から、裸の男がふたりも、ごろっと出てこようたァ思いませんもん。お蔭で厭なもんまで見ち…

神さまの左手 7

スフォルツェコの城門へは、歩いてすぐに行きつける。 とは云え、大荷物のサライにとっては、その短い道のりも結構なものに感じられた。早足で歩くレオナルドに遅れぬよう、ほとんど小走りであったから、かかった時間はさほどではなかったはずだけれど。 レ…

北辺の星辰 30

開陽丸での合議とも云えぬ合議ののち、蝦夷地への上陸は十月二十日、まずは選ばれた三十名ほどのものが行うことに決まった。 一斉に上陸する案もなくはなかったのだが、このあたりにどれほどの集落が存在しているかもわからぬうちに上陸すれば、最悪、戦なら…

小噺・牧野忠雅の儀

「土方さん、土方さん、今そこで、俺ァすげェもん見ちまいましたぜ」 「あァ? 何だ、また斉藤が、厨房の水瓶ん中からでも飛び出してきたってェのか?」 「違いますよ! それァ大したことじゃねェでしょう。何でそうくるんですかい、牧野さんですよ!」 「(…