鎌倉幻視

狂恋

※男×男の性的描写シーンが出てきます。閲覧の際は、自己責任でお願い致します。

半色 八 (完結)

案の定、重盛の云うようは、父にあっさりと退けられたのだが。 池禅尼は、確実にその目的を達しようとしていた。 聞くところによれば、禅尼は、父の使いの者の前ではらはらと涙を流し、 「何と云うこと――もし大殿がご健在でありましたら、妾もかように軽う扱…

半色 七

「前播磨守殿の御嫡男が捕縛されましたぞ」 と、重盛に告げてきたのは、叔父・頼盛であった。 「は、それは……」 と云いながら、重盛の胸のうちには疑問がわき上がっていた。 何故、この叔父は、自分にかの小冠者の話をするのだろう? 「私の郎党の――平宗清と…

半色 六

「内裏を戦の場にするわけにはゆかぬ」 と云う父の言葉に従って、重盛は、叔父である頼盛とともに出陣することになった。 とは云え、三条殿に攻め寄せるわけではもちろんなく、敵をこちらに引きつけるため、六波羅の近隣に兵を散開させる、と云う布陣であっ…

無明長夜

水干の胸許に、散るものがあった。 見れば、染みたのは朱――血の飛沫だ。 ああ、範頼の血だ、と思った――それ以外の、何の感慨もおこらなかった。 夢だとわかっていたからかも知れぬ。何となれば、範頼が自死したのは伊豆・修善寺であり、自分は鎌倉から離れて…

半色 五

極月九日夜半、重盛の館に雑色が飛びこんできた。 「申し上げます! 水無瀬参議殿率いる兵ども、三条殿を襲い、当今と院の御身柄を手中にされた由!」 「何!」 参議・信頼の手下に、多くの坂東武者があることは知っていたが――かれは、それを動かし、三条殿…

半色 四

※若干の男×男的表現がございます(ぬるいので畳みませんが)。閲覧の際は、自己責任でお願い致します。 重盛と成親は、そ知らぬ顔で数日を過ごした。 件の小冠者は――実は、既に上西門院の蔵人となっていたのだが――、小耳にはさんだところでは、あれから病に伏…

半色 三

※児童虐待及び性的搾取のシーンが出てきます。閲覧の際は、自己責任でお願い致します。重盛お好きな方は、閲覧をお止めになった方が宜しいかと思われます……

半色 二

成親に連れられてやってきたのは、内裏の奥、後宮の一角にある、とある局であった。 この局の主である女房と浅からぬ縁があるのだと、成親は、密やかな笑みを浮かべて云ったものだが――その“縁”とは、すなわち、この女房が後宮に上がる前に、かれがかの女のも…

半色 一

濃紫と薄紫の間のいろを、“半色”と呼ぶのだと云う。濃くも薄くもない、半端な色と云う意味であるのだと。 まるで、己のようではないか――平重盛はそう考えて、小裂をひねり回しながら、小さく吐息した。 重盛は、武門のほまれ高き伊勢平氏の人間である。祖父…