小噺・野村利三郎の儀

「土方さん、こないだ野村さんに会いましたぜ」
「野村? 野村ってなァ、野村利三郎か?」
「そうでさァ。相変わらずうるさくしてやがるんで、ちょっと撫でてやりましたぜ(爽笑)」
「“撫でて”って、おめェ……」
「斬りつけたりァしませんでしたよ。ただちょっと、柔術の技ァかけてやったんで。参ったって云うまで決めといてやりましたさァ」
「……ほどほどにしといてやれよ(溜息)」
「もちろんでさァ(にこ)。――野村さんと云やァ、しょっちゅう相馬さんと喧嘩してたのを思い出しますねェ」
「あァ、あのふたりァ、反りが合わなかったからなァ。そのくせ、よく一緒にいたもんだが」
「喧嘩して、仲直りしてをくり返してましたもんねェ。あれァ不思議なもんだなァっていっつも思いましたけど」
「まったくだぜ。あれで仲が良かったんだか、悪かったんだか……」
「まァ、悪かァなかったんでしょうさァ、仲直りするんですからねェ。島田さんなんか、あのふたりがやりあってんの、面白がって見てましたしねェ」
「あァ――五月蠅ェから分けとけってェ、俺はよく云ってたんだがなァ」
「まァ、あれはあれなりの仲の良さなんでしょうさァ。仲良くなかったのァ、一ちゃんとでしたからねェ」
「斉藤と? 野村がか?」
「野村さんと相馬さんがでさァ。一ちゃんの方も、あんまり近づきゃしませんでしたしね」
「……そいつァ初耳だぜ」
「そうですか? 何でかわからねぇんですけど、あそこァ仲悪かったですぜ。相馬さんや野村さんは、俺には飲みに行こうって声かけてくるんですけど、一ちゃんには絶対声かけませんでしたもんねェ」
「……そうなのか」
「そうですよ。あんたァ、意外とまわり見てねェんですねェ」
「そんなこたァねェ、はずだがなァ」
「見えてませんよ。何たって、一ちゃんが懐いてってるのもわかんねェんですからねェ。珍しいんですぜ、一ちゃんが自分から懐いてくのって」
「あいつァ、斬りかかってきそうな恐ろしい顔か、何か企んでそうな満面の笑顔で来やがるから……」
「本当に、あんたァ兎の心臓ですよねェ」
「やかましいわ!」
「ふふ。――でも、野村さんが云ってたんですけど、一ちゃんの件では、相馬さんが結構引っ張ってたとか聞きましたぜ」
「何をだよ」
「一ちゃん、会津新撰組抜けたんでしょう? そのことを、相馬さん、後々まで何か云ってたそうですぜ」
「野村が怒ってたのァ知ってるが、相馬は落ち着いてたと思ったぜ? ――あァ、しかし確かに、相馬の方が引っ張る口だったよなァ。心ん中に閻魔帳がありそうってェ感じか」
「そうですねェ。野村さんは、その時ァ怒りまくりますけど、後にゃ引かねェですからねェ」
「そうか――しかし、相馬がそんな、なァ……斉藤が抜けたと聞いた時ァ、俺ァ肩の荷がひとつ下りたように思ったもんだがなァ」
「一ちゃんが重荷だったってェことですかい」
「そう云うわけじゃねェが――あいつが自分のみちを行ってくれたのァ、俺としちゃあ嬉しかったんだよ。俺が引きずりまわしていいもんじゃあねェからな」
「何度も云うようですけど、あんたについてった連中は、自分で選んでやってたんですぜ?」
「それでもな、俺なんぞについてくるもんじゃあねぇんだよ。それがいい訳ァねェんだ。他にみちがあるんなら、そっちへ行った方がいいんだよ」
「まァ、あんたはそうかも知れませんがねェ。――良いじゃねェですかい、あんたァ好かれてたんですよ。野村さんだって、あんたのこと、気にしてましたぜ」
「……そうか(照れ)」
「まったく、あんたァ自信家のくせに、どうしてそんなところだけァそうなんですかねェ。――手間がかかるったらありゃしませんぜ(溜息)」


† † † † †


阿呆話at地獄の五丁目。
今回は、野村の話――って云っていいのかな? 一応、タイトルは野村でいきますが。


で、結局、野村・相馬は仲良かったの、悪かったの? 何となく、喧嘩ばっかのイメージなので、仲悪かったのかなァとも思うのですが、仲直りしてたんだったら、仲良いのか……わからん。
一ちゃんと仲が悪かったのは、もしかして、鬼に懐いてってるのがやだったのか? 総司は弟みたいなもんだったからいいけど、一ちゃんは、“副長が逃げてるじゃないか!”ってことか? ……謎。
まぁ、最新電波情報なんで(笑)、発見がいろいろ。でもって、いろいろと謎が深まるばかりでございます。


ちょっとしんみりしちゃったなァ、今回は……
宇都宮戦に没入した後なので、その余韻でこうなのかもしれませんが。
ところで、資料探してWeb上をふらふらしてたら、大鳥さん至上主義! なサイトさんみつけましたが――まぁ、“至上主義!”って、意見が偏りがちだよね、と思うのは、鬼至上主義ではないからか。
でも、勝さんは至上主義! なので、意見が偏らないようにしたい、けど、難しいよなァ。特に、あんまり好かれてない人物に傾倒すると、ねェ。私も、小栗さんには手厳しくなっちゃうもんなァ。伊藤さん(博文ね)とかにもね。
うん、そちらのサイトさんに賛同はできない(一応、鬼Push? なんで)のですが、エールだけはそっと送っておこう。


次は鉄ちゃんの話で、松前攻略本番か。
勇ましいところのはずなんですけど、どういう風になるのかな……頑張ろう。うん。