同居バトン ED

 数日後、土方歳三沖田総司は、それぞれの時代に帰っていった――ようやっと。
 ――あァ、清々した。
 などと云うと、鬼や総司を好きな、元&現同僚諸嬢に怒られてしまいそうだが。
 しかし、実際に連中と暮らしてみれば、そんな甘いことは云ってなどいられない。
 正直云って、鬼はぐだぐだな生活態度だし、総司だって同じくらいいい加減だ。と云うか、流石に生来の職に就かなかった連中なだけはある。今ならフリーターなんぞになっていそうな感じなのだ。つまりは、はみ出し者と云うか、はぐれ者と云うか。
 ――まァいいや。
 ともかくも、傍迷惑な来訪者どもは去って行った。これからは、またいつもの日常が返ってくるのだ――だが。
「……うおォォ、あたしのプレステェェェ!!」
 帰宅して、自分の部屋に入って驚愕する。
 ないのだ。買ったばかりのPS3、しかも生産中止になった60GBモデルが。
 しかも、それだけではなく、
「ああァァ、ちかちゃん、こじゅうろう……!」
 やはり買って間がない「戦国BASARA2 英雄外伝」のソフトもない。
 かろうじて、モニタとして使っていたテレビ('90年製 室内アンテナ付 モノラル音声)は残っているが――ゲームマシンもないのに、この先これでどうしろと。
 と云うか、残された何本かのゲームソフトが、ただの銀色の円盤と化してしまったのだが、これは何か、中古でも何でも、PS2を買いなおせと、そう云うことなのか……?
「あたしの6万えん……!」
 給料の下がり続ける昨今、これでまたPS3を買えるわけもない。と云うか、次に買うとなると、マシンが2台になってしまう――今流通している40GBver.は、PS2のソフトは入れられないのだ。
 もちろん、この盗難事件の犯人はわかっている。そんなもの、ひとりしか考えられないではないか、
「鬼の馬鹿野郎ー!!!!!」
 ――持って帰ったって、江戸時代じゃあゲームなんぞできねェだろ!!!!!
 電気の通じていない時代にあんなものを持って帰って、一体どうするつもりなのだろう――しかも、モニタだってありはしないのに。
 ――あァ畜生、あの馬鹿ったれ!
 仕方ない、金もないし、次はいっそWiiでも買うか、と思いながら、TVの横の空きスペースをどうにかしようとしていると。
 ♪♫♬♩♬♫♪♬♩♫♬♪〜
 PHSの着メロが鳴った。沖田番からだ。
「……もしもし」
《ボス! 持ってかれた!!》
「……何を」
 訊かずとも、答えはもちろんわかっていた。
 案の定、
《TVがないさ!》
 沖田番の発した言葉は、予想したとおりのもので。
「……やっぱりな……」
 わかっていたとは云え、脱力してしまう。
 それにしても、鬼と総司は別々に帰って行ったのだし、示し合わすにも、そんな暇など――
「――……あ」
 いや、一度だけチャンスがあった。沖田番と電話で話していた時に、総司と鬼が代わってくれと云い出したことがあった。
 しかも御丁寧に「終わったら切っとくから、おめェは風呂にでも入ってきたらどうだ」などと云ってきたのだ。その言葉にほいほいと乗ってしまったのだが、今思い返してみれば、おそらくはあの時に、あのふたりはTVとPS3を持ち出す算段をしていたのに違いない。
「くっそ、あの野郎ども……!」
 歯噛みするが、もう遅い。
《……どうすんだろーねー、電気ないのにねー》
 沖田番も、同じようなことを云いながら、溜息をつく。
 あっちのTVは、確か地デジ対応のワイド液晶TVだったはずだ。サイズは個人用だが、この14型のTVよりは確実に大きいだろう。
「……まァ、いずれ返しに――くるといいんだがなァ」
 買い直すにしても、6万は大きい。沖田番のTVなど、それでは済まない額だろう。
《ははははは……もー、しょーがないねー》
 半ば投げやりな笑いを、沖田番がこぼした時。
 電話の向こうで、チャイムが鳴った。ほぼ同じに、こちらのインターフォンも。
《あや、お客さんみたいだ〜》
「うちもだ」
《あ、じゃあ、また後でね〜》
 そう云って、通話が切れた。
 PHSを充電器に戻していると、再びインターフォンが鳴る。
「はいはいはい!」
 大声で返事をして、どかどかと階段を降り、玄関の戸を開ける。
 と、そこには。
「どうも。また来ましたぜ」
 PS3の黒い筺体を抱えた、にやにや笑いを浮かべた総司の姿が――


 end?


† † † † †


さてさて、と云うわけで、これでバトンは終了(やっと!)。
次からは、再び元のお話に戻します――ちょっとルネサンスいれちゃうけどね(笑)。まァ、関係なくはないの、深ァいところでね……そう云うと、戦国も入れたくなっちゃうんだけど、まァ、そっちは書かなくてもいいしな。さて。


とりあえず、次は阿呆話! ちょっと新展開(←え)ですよ、ふふふふふ……