「近藤を待ちながら」観劇記。

っつーわけで、またも新撰組関連の芝居の感想を。
SPACE 107で上演の、Office-Urey「近藤を待ちながら」です。これが春の幕末観劇ツアー(?)ラストです。
またしても、ネタばれを含む&毒吐いてます(しかし畳まない)ので、ご注意!


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実はこのお芝居、沖田番が仕事帰りにチラシを発見したので見に行ったのでした。沖田番の職場は西新宿――普段は通らないルートだったらしいのですが、たまたま通りがかって、「呼ばれたから持ってきた!」……そうですかい。
と云うわけで、今日も仕事を上がってからの観劇。山南役と事前に職場裏で待ち合わせ、沖田番も合流して、いざ。


……えーと、思ってたより広い小屋だった、です。芸術劇場小ホール2くらいかと思ってたら、1くらい席が設置してあった――でもって、ほぼ満席だったような。段になる前のフラットな場所に席取りしてしまった(だって、三人でって云うと、もう選択の余地がなくなりつつあったんだ)ので、ステージはやや見辛い。前の人たちが、結構ガタイが宜しかったからにゃ。


とりあえず、キャスティングの段階でかなりびっくり――西田良さんが! 私の理想の源さんが! 何で桂さんよ!!!
でもって、長州藩士だとは知っていた田井宏明さんと云う方が、来島又兵衛――すみません、私、瞬間「海援隊?」とか思ってました(来島又兵衛は、元治元年の杉京都出奔の原因のひとり)。っつーか、どうもま.た.子(by銀.魂)が思い浮かんで仕方がありませんでした。長州はよくわかってないの、まるわかり(汗)。
浅野薫は案の定女の子。かっちゃん、鬼、源さんとぱっつぁんはいるけど、総司のいない新撰組――なんだこりゃ。
と思ってたら、芝居がはじまって二度びっくり。いきなりかっちゃんが斬られた……! と思ったら、何だこの謎の芝居っぷり。っつーか、は? 来島さんが新撰組作ったの? と、既にトンデモ系の様相。
長州藩士に斬られっぱなし(やらせ)で、葬式ばっかり出してる新撰組。でも、実際には誰も死んでない新撰組。へっぴり腰なうえに、刀の差し方もなっちゃいない(これはマジ)新撰組!
でも、何かこれが愛おしいのよ……何て云うのかな、「あァ、こういう新撰組だったら良かったのかなァ……」と云う――やっぱちょっと、幕末維新引張り過ぎてるのかなァ、私……


とりあえず、全体の感想を云うと、すごーくゆるーい、と云うか、ぬるーいお芝居でした。
ギャグはとっても笑えなかったし、田井さんと西田さん、客演の羽座さん(源さんの女房(!)おうめ役)以外は、いろいろお芝居も微妙だった……そもそも、きちんと侍っぽい所作ができてたのって、田井さん西田さんと、西田さんの後ろに控えてた長州藩士役の人(お名前わからん)くらいだったしね。この↑お二人は、ホントに羽織袴に大小二本差が決まってて、非常に安心感がありました。
が、新撰組は刀の差し方からしてなっちゃいない。こらこら、その角度でさしてちゃ、とっさの時に抜けないでしょ! って云うか。そもそも、大小じゃなく、大だけだったもんね。脇差は〜? 金銭的なあれか、来島・桂組との視覚的差異化(山南役の意見)のためか。まァ、どっちでもいいのかも知れないんだけど、ただ、“侍”は二本差なので(一本なら、武士じゃなくとも差せるのよ)、どうもその辺、違和感がありましたよ。まァいいけど。


けどまァ、今回は結構面白く見れました。
っつーか、ここ暫く見てきた幕末系のお芝居の中では、一番ふつーに面白く見れたかも。
まァ、(山南役の云うとおり)とってもぬるいし、そう云う意味では押しが足りない(演出とかね)。あと、役者がとっても拙い。
けど、それでも面白く見れたってのは、あれだ、多分全体のバランスが取れてたからだと思います。役者の(全体的な)力量と、脚本と、演出がね。どれかひとつが突出しているのではなく、何かが激しく欠落しているわけでもない。
脚本は、はじめの(新撰組が、実は長州の企画で作られたと云う)ネタ以外は、わりと予定調和で話が収まっていったんだけど、ぬるくて落ちは読めるんだけど、綺麗にまとまってた。
演出も、ギャグとか結構滑ってましたが、しかしまァ大過なく見れた。
あとまァ、キャスティングも考えてあったなァと。かっちゃんの配役はあたりだったなァ。うん、展開とかわかりやすかったけど、でもまァきちんとピースははまってた。
中.島.梓的に云うと、「低いレヴェルでの完成」と云うことになるのかなァと思うんだけど――
……あのー、私、基本的に、上質の素材で作られたドラァグクイーンの衣装よりは、東南アジア製のシンプルなTシャツ(縫製がアヤしい)の方が好きなんです。いくら突出した技能を持った人間がいても、それがきちんと機能して、はまるところにはまってできた“物語”じゃないと、見ても面白いと思えないんです。
山南役は別意見みたいだけど――しかし奴は、「カッコ良かったから」と云う理由で、合わせる着物もないのに、竜の模様の帯を買う奴だからな。ピンポイントのこけ脅かしを評価するタイプだけど、私はそうじゃないのよ。それだけのことなのですが。


あ、あと、これもちょっと思ったんだけど、このお芝居、芸能事務所の企画だからか、小劇団の内輪でかたまっちゃった感じ(ネタが内輪受けだと云う意味ではなく)がなくて、それが私的には良かったのかも。内輪受けがなくとも漂うあのなァなァ感がなかったから、それでより評価が(あくまでも相対的にですが)良いのかもね。
山南役の云ってた「TV寄りにしたいのか、小劇寄りにしたいのか、どっちだ!」って云うの、多分あれ、TV寄りだったんだと思います。だって、マ.ツ.ケ.ンの「用心棒」に近いんだよ。主役がメインで、他は本当に脇って云う。だから今回は、来島=田井さん主役で、この人が話の中心、でバランスが取れてたんだよ。
山南役的には、その辺がアウトだったのかも知れないけど、私は逆に、そこがOKでした。
うん、でもまァ、誰かに勧めるには、結構アレだけどね。私も、新撰組じゃなかったら見なかっただろうなァ。まァしかし、それを云ったら、春の観劇ツアーは全部そうなんだけど。


細かいことは、もう云っても仕方がないので(苦笑)、楽しめましたと云っておこう。
あ、でもひとつだけ、もうちょい舞台が高かったら良かったなァ。床に座ってあれこれやるシーン、後ろの方だと見えませんでしたよ。あと、音響は微妙。いえ、音のフェイドとかが。
殺陣は、まァ一部が頑張ってましたが、あとは(以下略)。
とりあえず今回は、“愛おしい新撰組”と云うことで――ああいう新撰組、書いてみたくなりました。まァ私には絶対無理だけど。権謀術数、はめたりはめられたり、が新撰組だもんなァ。私には無理。
あ、もうひとつあった、源さんキャラは、あれはちょっと……! あれなら原田の方が良かったんじゃ? まァ、年齢的なあれこれなんだろうけど、でも源さん結婚してなかったし! 原田は女房いたし! まァ、そんな感じ。


しかし、本当に西田さんはカッコ良かった……♥ 桂さんではあり得ないけど(笑)。桂さんなら、田井さんの方がイメージですね。背が足りないけども(桂さん、180cmオーヴァーだからにゃ)。
あああ、やっぱ西田さんが源さんで、田井さん桂さんで何かやれたら面白いのになー(←自分的妄想)。桂さん取り逃がした総司を、鬼がげしょげしょに蹴って、源さんに宥められたあの話とか、どうかなァ……
って、シナリオも書けないくせに、なんだそりゃ。その前に話を書け、自分。


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と云うわけで、観劇記終了。あんまり毒舌にならなかった――点が甘いのは、西田さん田井さんのせいだということで。


さてさて、次はルネサンス4回目〜。