小噺・狐談義
「……なァ、総司」
「何ですかい、土方さん」
「いっつも思うんだがよ、俺ァ狐キツネってェ云われるじゃねェか」
「えェ、まァそうですねェ」
「でもな、思うんだけどよ、俺と山南さんじゃあ、そんなに腹黒さァ変わんねェよな？」
「南さんァ、黒かァねェですよ？」
「黒いって！ おめェの惚れた医家の娘、嫁に出しゃあいいって云ったのァ、山南さんだぜ？」
「南さんがそんなこと云うはずァねェでしょう。あんたの入れ知恵なんでしょう？ きりきり吐きなせェよ」
「あれァ、本当に俺じゃなくて、南さんの発案だってェの！ 大体、あれァかっちゃんだって悪いんだぜ、考えこむふりで、俺や南さんに口開かせようってェんだからな」
「自分に不利だからって、いねェ人に押し付けようとすんのァ、どうかと思いますぜ、土方さん？」
「違うんだって！」
「大体、それで一体、何が云いてェんですよ、あんたァ」
「……だってよ、はっきり云やァ、俺より南さんの方が、さらっと狡ィことしてやがんのに、何であれで、まわりの連中ァ“狡ィ”って思わなかったんだかって思うと」
「は？」
「だから！ 南さんだって、聖人君子じゃなかっただろ！ で、俺だけ何で“狐”呼ばわりだよって思うじゃねェかよ(むくれ)」
「……それって」
「南さんだって、伊達に“副長”やってたわけじゃあねェ、俺に負けず劣らず、隊士の処遇なんぞもやってたんだ。それァ、ちっとばかり甘いところもあったかも知れねェが、南さんばかりが“仏”で、俺が“狐”ってェ云われなきゃならねェほどの、差ァなかったと思うんだがなァ？」
「……ぶっ、はははは！ 何だ、土方さん、可愛いこと云っちゃって！」
「可愛いたァ何だよ！」
「や、そうやってごねてんの見ると、可愛いなァってェ思いますよ(笑)」
「可愛くなくていい！ (怒)」
「(うくくくく)……でも、あんたァ狐じゃねェですかい」
「俺ァ、自分が狡ィ奴だって自覚してるだけだ」
「で、南さんは」
「すくなくとも、自分で“狡ィ”って云ってなかったことだけァ確かだなァ」
「じゃあ、そこが違うんじゃねェですかい」
「あ？」
「あんたァ、ひとから“狐”って云われて、反論できますかい？」
「……う」
「できねェんでしょう？ だから、“狐”ってェ云われても仕方ないんですよ」
「……じゃあ、南さんァ、自覚がねェから狐じゃねェってのかよ」
「まァ、そう云うことですよねェ」
「納得できねェ……!!」
「あんたが納得しようがするまいが、世間的にァそうなんですって」
「それァ、自覚したもん負けってことかよ！」
「そうですよ」
「やっぱり納得いかねェ……！」
「いかなくっても、そうなんですって。……ホントにもう、土方さんってば、可愛いなァ♥」
「……畜生、おめェなんて、総司のくせにー！ (泣きながら走り去る)」
「あれ、行っちゃうんですかい？ ……ホントに可愛いんだから、土方さんってば♥」
† † † † †
阿呆話at地獄の三丁目。
何か、久しぶりだ、このテイスト……
えーと、この話は、かなり実体験に基づいております。
や、何かこう、人から「黒い、黒い」って云われるのは慣れてるんですけども、あいつと較べて黒いと云われるのァ納得がいかねー！ と云う。まァ、それだけなんですけども。
で、沖田番に云われたのが、上のとおり。「可愛い」も、実際に云いやがった……可愛くなくていいんだって！
冥界再編は、ホントに再編してる感じになってるので、その辺を書こうかなーとも思ったんですが。段々参加人数(って云うか、派閥数？)が増えてきてて、今以上に混乱しそうなのと、まァぶっちゃけ把握しきってないので、また今度。
大久保一翁さんの話とか、最近気の毒になってきたタロさんの話とか、あちこちから仕入れた天璋院様の話(！)とか、眼鏡マニアの山南さんの話とか、いろいろあるんですけども。あ、杉の話とか、ますじの話とかも、いろいろねー。
まァ、そのうちぼちぼちとやりたいですよ。
えーと、最近また資料が増えた、のは、一翁さんの本とか、彦にゃんの本とか、がじわじわっと増えてるせいだろうなァ……
と云うか、今の職場に、勝さん好きの時代劇好きな方がいらっしゃるので、ちょっと嬉しい……勝好き、リアルではあまり見かけない(何故)ので、同志がいるのはありがたいですよ！
そのＭさんと、再来年の大河について話していたのですが。再来年、龍馬が福山なら、勝さん柴.田.恭.兵でいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
と云ったら、沖田番には「柴.田.恭.兵はprettyだけど、勝さんはcuteだから、属性が違うよ！」と云われてしまいました、が……
勝さんのあの軽さって、柴.田.恭.兵と一脈通じるものがあると思うんだけどなァ。北.大.路.欣.也は、わからなくはないけど、ちょっと重すぎる(見た目ではなくて、雰囲気の問題として)と思うんですけど、どうでしょうかねェ。
まァ、まだ再来年の話なので、鬼が笑うどころじゃあないか……
さてさて。
次は鬼の北海行――かなり久しぶりですねェ。
今度こそ、松前攻略〜。
