あの子と同居バトン サルベージ編2

と云うわけで、バトンです。これがラスト、かな? (いや、他にも新撰組好きはいるんだけど――残りのキャラがかっちゃんorぱっつぁんor原田だし(いや、かっしーとかでもいいんだけど)、第一やるかどうかも……どうですかね、Kふ先生?)
トリ(一応)担当の寿々莉さんは、史実新撰組に縁のない人(しかし、明日っから北海道旅行だよねー。五稜郭行くんだよねー)なので、敢えて「薄桜鬼」の平ちゃんで。
重いので畳みます〜。


あの子と同居バトン
指定キャラ→『藤堂平助(薄桜鬼)』


 仕事という第1ラウンドを終え帰宅した寿々莉は、この日も第2ラウンドに突入していた。
 曰く、子供達のお迎え&家事&育児・・・・である。
「ほれっ! 真弘、手ぇ洗ってランドセルかたして連絡帳出すっ! 拓磨、珠紀ッいつまで遊んでんの?! さっさと手洗って、リュックかたしなさい!!」
 ホントにもーっ! いつもいつもいっっっつも、同じことで怒鳴らなきゃならないこのストレス!
 なんで家に帰って手を洗って、自分の物かたすこと位出来ないんだろーか?!
 毎日の如く光景に深く熱い嘆息を漏らしつつ、出来た夕飯をテーブルに並べていく。
 これから子供を寝かせるまで続く、戦場のような慌ただしさに苛立ちながら子供たちを急かしていると、ふいにチャイムが誰かの訪問を告げた。


=pin pon♪=


「「「はーいッ!!」」」
「って、ちょっと待ちなさいっ!! 玄関は勝手に開けちゃダメーーーっ!!」
 防犯意識皆無なおバカさんたちを制止して、インターフォンを確認する。
(・・・ったく、新聞屋なら速効叩き返す!)
 この忙しい時間の来訪者に内心愚痴りつつ、受話器をあげ画面を確認した。
 ・・・暗くてよく分からないが、若い男のようだ。
「はい?」
「あっ、えっと・・・俺、『天祥』って人から伝言預かってきたモンだけど・・・ここって寿々莉さんの家、だろ?」
(・・・天祥? ・・・って、なんで? ってか誰このヒト?)
 古くからの友人の顔を思い浮かべ、脳内を?マークが埋め尽くす。
 確かに彼女とは古い付き合いだが、たいていの要件はメールで済ますのに・・・
 しばらく受話器を持ったまま、この怪しいことこの上ない訪問者の話の真偽を考えていると。
「どおぞー♪ ママぁ、このおにいちゃん『おきゃくさん』だってー!」
「うわっ! ちょ・・・っ、あんたたち!!」
 さっさと子供たちが玄関の鍵を開け、不審極まる「客人」を招き入れていた・・・・。
(おまえらいつか刺されて死ぬぞーーーーーッッッッ!!!)
 がっくりと頭を垂れてわが子のアホさ加減に泣きながら玄関に向かえば、その『客人』はおずおずといった態でそこに立っていた。
「えっ・・・・・・・・・・・と。君、もしかしてその顔、「藤堂平助」君、だとか・・・?」
「えっ?! なんで俺の名知ってんの?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・『天祥の友人』・・・だから?」
「あー、そっかぁ!!」
 疑問形の私の答えに、なぜかえらく納得する平助。
 ・・・・・・・便利な友人だと思う反面、こんな理由がまかり通るほど「もう彼に本性見せたんかいッ忍?!」と脳内ツッコミを入れる自分。
 なんだかどっと疲れた私は壁に寄りかかり、腕組みしたままこの珍妙な客の用件を聞いた。
「・・・で、天祥の伝言って何?」
 対客用の仮面を被らない素の私は、他人に対し威圧感を与える。
 分かっていてもこの忙しい時間帯、相手は天祥がらみの客、とあればわざわざ公の自分を作るのも馬鹿らしい。
 そんなわけで無意識の威圧感を漂わせ問いただしたのだが、この訪問者はそんな私の不機嫌さをおくびともせず懐から一枚の手紙を取り出した。
(・・・・さすがは八番組組長だけあるなぁ。 ま、楽でいいか)
 手紙を受け取り、中を開いて見る。
 そして。



絶句





(・・・・聞いちゃいたけど・・・・小耳に挟んではいたけど・・・これが噂のガスパッチョ現象ってヤツ?!)
 なんとも形容しがたい感情が逆巻いて、肩が震える。
まさかもしやの東京ガス現象・・・・一生自分には縁がないと思ってたのに・・・(泣)
「まま? ままー?! どうしたのー? このおにいちゃん、だれー?!」
 俯きぷるぷると体を震わせる私にこの状況を説明しろと、子供たちが足もとにまとわりつく。
「おーい? どうしたんだ? その手紙、なんて書いてあったんだ?」
 おそらく何も知らないのであろう平助が、無邪気に問いかける声が聞こえる。つーか、眩暈でぐらぐらする頭に響く。
 頑張れ自分! ここで現実逃避してもなにも変わらない!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、とりあえずお上がり、平助君。 君・・・・しばらく元いた世界に帰れないんだってさ」
「・・・え? って、えええええええええええええええええええっっっっっ!!!!????」
 この様子だと、きっと彼はここに来れば元いた世界に帰れるとかなんとか言いくるめられ、期待に胸ふくらませて来たんだろーな。
(っち、天祥め電話やメールじゃ私が速効断ると思って、実物ごと手紙を送り付けてきたんかい!)
 こんな時は長い付き合いで、気心しれた間柄が恨めしい。
 でっかい溜息をつきつつ、彼の様子を伺えばおたおたと動揺を見せる平助が子供たちにまとわりつかれいて。
 とりあえず、『帰れる日時がわかったら追って連絡するので、それまで預かってくれ』という天祥の手紙を握りつぶし、私は子供たちと共に彼を家に上げた。


■朝はあなたと「藤堂平助」、どっちが先に起きてる?


 うちの朝は結構早い。
 何故なら兼業主婦の私は、朝のうちに朝、昼(弁当)、夕飯を作ってしまうからだ。
 目ざましが鳴ると末っ子が起きてうざい(朝からだっこだの構ってだので手がかかる)ので、時計がなる瞬間に目が覚める。
 ・・・・今朝もジャストタイミングで時計を叩き目ざましを止めた私は、そっと布団を抜け出して階下へと向かう。
 誰もいない部屋の明かりをつける。
 と、・・・・・・・・・・・・・・うっわっ! 誰かいた!!
「び・・・びっくりした!! もう起きてたの? ってか電気くらいつけるとか、雨戸開けるとかしたら?!」
 驚きから、ついつい詰るような声色になってしまった第一声。
「あ。おはよう!」
 だけど、暗闇の中で静かに正坐してた彼は、そんな声色を気にもせずにかっと笑った。
「・・・・何やってんの?」
「んー? 朝の鍛練。昨日寿々莉さん言ってたじゃん? ここでは剣を振るっちゃダメって。だから瞑想だけでもってさ」
「あ、そう・・・」
 律儀ないい子だ。さすが元お坊ちゃま。
 そんな感想を抱きつつ、時間のない私は手早く雨戸を開け夕食&弁当&朝食の準備にかかる。
 そんな私の後ろでなおも瞑想を続ける彼に遠慮して、いつもはつけ始めるTVも今日はお預け。


■朝食どっちが作る? 何がいい?


 日常の流れから台所仕事は怒涛の勢いでこなしてゆく。
 なんせ朝は時間がない。しかも今は旦那が長期出張に出ているから、孤軍奮闘だ。
 ・・・っと、待て。うちのモットーは「立ってるものはネコでも親でも不審者でも使え!」だ。
 ならば、この居候を戦力に数えない手はない。
「ちょっと平助君! 2階に行って子供たち起こしてきて! そんでもって着替え手伝ってやって!」
 食事を作る手は休めずに声だけで発破をかける私の耳に、気前の良い声と階段を登るリズミカルな足音が聞こえた。



「はいはい! さっさと食べちゃってね!」
 食卓には和洋折衷な食事の数々。
 だってうちは基本パンだもん。・・・忙しいから。
 でも、この江戸時代の客人にそれを与えるのはさすがに憚られ、結果として夕食と弁当のおかず+αを少しづつ出すことにした。


さばのみりん干し、卵焼き、キャベツの浅漬け&にらと卵のお吸い物→平助分
はちみつトースト、砂糖たっぷりカフェオレ、ヨーグルト、果物&卵焼き→子供たちの分


「おー? それなんだよ、真弘? なんつー食べ物?」
「えー! パンも知らないの、平助? ってゆーか、ママ! 俺もにらのスープがいいーッ!!」
「黙って出されたものを食べなさい! お吸い物は夜用なのっ」
「ええーっ、ズルイ平助だけ、ひいきじゃん!!」
「ままぁ、たまきもー! おしゅいものがいいー!」
「あー、たまきがのむなら、たくまもすーぷがいい!」
「・・・・・・・・・(怒)」
 なおもぎゃあぎゃあ喚く子供たちを無視し、背を向け、洗面所に飛び込む。
 今日は洗濯日だから、これを干してからじゃなきゃ私は朝食にありつけない。
 手早く洗濯機から洗濯物を取り出し、山となった籠を抱える。
 そして。
 朝から他人と食事するという非日常にはしゃぐ子供たちに喝を入れ、子供と一緒にはしゃぐ(←切実にどうにかしてくれこのヒト…)平助を怒りながら食事を急かしつつ、洗濯物を干しに二階へと駆け上がった私。
 階下からは楽しそうに笑いあう声がする。
 ・・・・・・・・・・どうでもいいけど、これ干し終わるまでに食べ終わってなかったら全員ぶっ飛ばす!


■そろそろ学校(仕事)の時間です。「藤堂平助」はどうすると思う?


「じゃ、仕事行ってくるからあんまり出かけないで・・・ってもムリか・・・まあいいや、出かけるならTVで今の時代の生活様式を再確認してから外に出るのよ? あ、出かけるなら家の鍵閉めてってね、とりあえず昼には一度仕事抜けて様子見にくるからさ・・・なんとしてでも・・・」
 あわあわと時間に追われつつ、子供を自転車に乗せて出かける準備をする。
 一応昨夜、とっっっっくり、じっっっっくり、日常生活を送る上での注意事項は紙に書きつつ説明した。
 腰に差してたモノも預かって屋根裏へ放り込んどいたし、服は旦那の私腹を与えておいたから、外に出しても奇天烈なほど人目を引くはずはない・・・・はず・・・きっと・・・いや多分・・(汗)
「だーいじょうぶだって! 早く行きなよ寿々莉さん」
「う・・・うん。じゃ、いってきます!」
「「へいすけにいちゃん、いってきまぁす!!」」
 でも何より時間がないので、心配事は山盛りあるまま、私は自転車を力いっぱい漕ぎだして家を後にした。


■学校(仕事)帰りに「藤堂平助」とばったり! 相手の反応は?


 自宅から仕事場は歩いて3分。
 その距離感に惹かれてこの家購入したんだから、まあそういうこと。
「よ! おかえり、寿々莉さん」
「・・・・出迎え御苦労、って言えばいいの? こーゆー場合」
 病院の壁に寄りかかりながら立っていた平助は、私の姿を見つけるとよっと片手を上げた。
 ・・・・・・・・・・こういう風景って見たことある。・・・・確か・・(渋谷の)ハチ公だっけ?
 ご主人さまを待つワンコ。ヤダ、似合う!
 思わず笑いに歪んだ口元を隠しながら、彼の隣に移動して。
 自転車を押しながら、わずかばかりの距離を歩く。
「これから私、子供たち迎えに行くから、平助君は家で待ってなさい」
「えー、もう家で待つのつまんねぇよ。俺も行く」
「・・・・・あんた、チャリ乗れないくせに何言ってんの。それよりもうすぐ真弘も学童から帰ってくるから、留守番しといてよ」
「むーう!」
「唸ってもダメ」
「・・・・・・・・」
「拗ね目で訴えてもダメ。平日はいつでも時間ないの!」
 にべもない拒絶の言葉に、平助の頭に幻の耳が見えた気がした。・・・・垂れてるし、ソレ(苦笑)
 そんな短いやり取りの後、家に彼を押し込めてから私は保育園を目指した。


■家に帰ったけど、あなたはやることがあります。そんな中「藤堂平助」はどうすると思う?


 家に帰ればゴングが響く!
 夕食は朝のうちに大方仕上げてるので、今日は魚を焼いてお吸い物を温めるだけ。
 そんでその時間を無駄にするようじゃ、兼業主婦なんかやってられない!
 お風呂の残り湯を抜き、タイマーをセットしておいた洗濯機から、半乾きの洗濯物を取り出す。(1日2回の洗濯なので、洗濯乾燥にしてるのだ、夜は部屋干しだから)
 洗濯物の入った籠をとりあえず階段に置き、部屋に戻ってまず一喝。
「ちょっと! ママの日本語分からない人! 何語でいえば手洗いお片付けが出来るんですかっ?!」
 きゃわきゃわとはしゃぐ子供たちと、これまた楽しそうに遊んでいる平助・・・・・も、ホントこのヒトなんとかしてください・・・・(泣)
 ナリは大人だけど、中身は5歳児と変わんねーだろ、このコ(爆泣)
「おー・・・おまえら母上が怒りまくってんぞ、早くやることやっちゃえよ」
「へ・い・す・け君もです!! さっさと手を洗って机くらい拭きなさい!!」
「うへっ、やぶへびじゃん・・・」
「ばっかでー平助! やることやんないとママこえーんだぞ!」
 口ばっか達者な長男。・・・・おまえも平助と一緒だっつーの!
 引き攣るこめかみの不快感に耐えつつ、魚をひっくり返し沸騰寸前の片手なべの火を止める。
 手早く食器を出し、濡らした台拭きをテーブルに放り投げ、平助に視線で拭くよう促したら風呂場へ直行。
 がしがしと苛立つ気分をぶつけるように風呂を洗って流して、蓋と栓をする。
 その足で部屋に戻れば未だ座り込んでいる子供たちと、放り投げられたままのリュックとランドセル。
「いい加減に、しなさぁーーーーいッッッ!!!!」


 誰だっけ。「男の子を一人生むたびに寿命が8か月縮む」って論文書いた人・・・・・・


■さぁ、夕食にしよう! どっちが作る?


「はい、それでは皆さんご一緒に!」
「「「いーたーだーきーまっす!!!」」」
「・・・・い、いただきます?」
 うちの習慣は保育園譲り。
 子供たちの大声にちょっとびっくりしたらしい平助は、それでも食事を前に律儀に手を合わせた。
 本日の献立は、さばのみりん干し、マーボー厚揚げ、ブロッコリーのだし醤油漬け、キャベツと茄子の浅漬け、キムチ納豆&にらと卵のお吸い物
「すっげー! 今日ってなんかお祝い事でもあんの?」
「っへ? なんで?」
「だって、すっげーご馳走じゃん!」
「・・・? フツーだよ。うちは基本一汁三菜だから。あ、でも旦那いなくなってから、前日の残りモノも出すようになって結構品数増えたなぁ」
「うっそ、マジ?! すっげー! これがいつも?!」
「ってゆーか、江戸時代ってそんなに粗食なの? ・・・あ! 真弘零さない! 珠紀膝立てるな! 拓磨左手使う!!」
 いくら言っても治らない子供たちのお行儀の悪さを、矢継ぎ早に叱る私。
 ぷつりと切られた会話が再開することはなく、ただひたすらに子をしつけ、食事をかっ込む。
 これが、寿々莉んちの日常。
「・・・・・・これが、いつも・・・?」
 京の仲間内で繰り広げられる食事バトルとは違った趣の、けれどそれに匹敵する騒々しさ(主に、私の怒鳴り声が占めるケド)に平助はちょっとあっけにとられたようだった。
 それでもしっかり山盛りご飯を3杯平らげてたけどね。


■夕食も終わり、テレビ(←久住さん、これあり得ないから寿々莉んちじゃ)に夢中なあなた。「藤堂平助」の反応は?


「とりあえず、子供たちとTVでも見ててよ」
「うん、寿々莉さんは?」
「洗濯物干して、布団ひいて、朝の洗濯物たたんで来るさ」
「・・・・すっげーな、休む暇ないじゃん」
「あ・た・り・ま・え! この後は子供の歯を磨いて風呂入れて、絵本読むまでが戦いよっ!」
「・・・・・・・・・御苦労さん」
 彼の興味に合うも合わないもない。
 この時間子供たちの御用達になってる12chをつけつつ、私は一人戦場に向かった。


■なんとお風呂で「藤堂平助」と遭遇! どうする?


「わっ! ちょっ、どーゆーことッ平助!?」
「うわっ!! ご、ごめんッ!!!」
 ぎゃいぎゃいとうるさい(しかも風呂場は声がよく響くん)子供たちを洗うのに意識を集中しすぎて、バタンと扉が大きな音を立てるまで気付かなかった私。
「えっ、にいちゃんもいっしょにはいるの?」
「入れるかボケッ!」
 とぼけたことをぬかす拓磨を叱りつけ、不機嫌丸出しの声で理由を問う。
 平助は慌てた様子ですぐさま扉を閉めたけど・・・・・・きっと背中(と尻)はみられたんだろーな(怒)
「とりあえず、事情を説明しなッ平助!」
「ごめんッ!! ほんっとすいません!!」
 扉越しに土下座してるシルエットが見える。
「・・・で?」
 でもそんなもんでほだされてはやんない。
 子供3人産んだって、捨てていいモノとそうでないモノはあるんだよ(怒)
 いらいらとした雰囲気を振りまけば、恐れをなした子供たちは一言も発さなくなり、外にいる平助からはしきりに息をのむ音が聞こえた。
「・・・・・で?!」
「えーと・・・あの・・なんか、ちっちぇもんが鳴り出して・・・その、どうしようかと」
「ちっちぇモンって何さ?!」
「あー・・・だから、白くてちっこい、こう、片手に収まる大きさの・・・なんか?」
(あー・・・・もしかして子機?)
 理由如何では今夜ここで追い出したろか?! と半ば本気で考えていたものの、まあ・・・ね。江戸時代の人間が電話見たことあるかっていえば、そんなのあるはずもなく。
 突然うるさく鳴り出した&なかなか鳴りやまない電話に驚くのを責めるほど、私ももう子供でもなければ乙女でもないし?(違う意味ではオトメだが・・・・)
「・・・・・・とりあえず、許す。不本意だが。そして忘れろ、今見たことは。・・・いい? 出来なきゃ簾巻きにして東京湾に沈めるよ」
「は・・・っ、はいっ!!!」
 命拾いしたな、平助。これが嫁入り前なら問答無用で殺ってたぞ。


■「藤堂平助」と一緒に寝ることに! あなたはどうする?


「で、どうする? どこで寝る平助君は?」
 昨日はみっちり「現代講座」を夜通しかましてたから、二人ともろくすっぽ寝てない。
 ふらふらになって布団に倒れ込んだから、同室で寝ることにもたいして気にしなかったが・・・・
 今夜は早めに寝つもりで、平助に聞くと彼もあまり意識してないのか「うーん」と唸るばかり。
「平助君が気にしないなら、ここで旦那の布団使っていいから寝る? 子供はさんで川・・・もというちは州の字になっちゃうけどさ」
「いや、寿々莉さん、州の字だと一人足んねえから」
「・・・・冗談も通じないの、アンタ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
 真面目、つーか融通が利かない平助を見る私の目は、呆れの色を濃く宿しているんだろうな。
 そう思いつつ、先ほど寝ついた拓磨と珠紀が布団から飛び出しているので、それを布団上に戻し、掛け物をかけてやる。
 疲れた、そして眠い。そんでもって平助は態度煮え切らない。
「ほら、あんたもさっさと寝な」
 彼の答えを待ち切れず、さっさと指示出し。
 だってここのルールは私だし。
「・・あ、うん」
「まだまだ寒いんだから、しっかり布団被るんだよ」
「お、おう・・・」
「じゃ、おやすみ、良い夢を」
「・・・・・おやすみ、なさい」
 もそもそと布団にもぐる平助を見届けてから、私も布団に体を横たえる。
(はーぁ、やっと今日も終わった・・・)
 疲れ&寝不足の身体沁みわたる、心地よい布団の感触。
 ほっと安堵のため息を漏らして、まぶたを閉じれば、聞こえてくる皆の寝息。
 子供たちの小さな寝息に混じる、少し大きめの音。
 早々と眠りに落ちた彼の寝息を聞きながら、思うことは彼の置かれた立場? 境遇?
 なんにせよ、日常からかけ離れた生活を送らざるを得ない平助に、ちょっと同情したり。
(まあね、彼も疲れたでしょ。こんなわけの分からん現象と現実では・・・)
 あどけない寝息を漏らす平助に苦笑して、「明日もまた頑張れ」と誰にともなく呟いて。
 大した時間もかからずに、私の意識も闇に溶けた。


■お休みなさい。では次に妄想させる人 を何人でも! キャラも指定して下さい!


 波乱万丈、怒涛の共同生活もなんとか板についてきて。
 平助込での生活に慣れた頃、突然来た一通のメール。
『今宵、藤堂平助を元の世界に帰すための扉が開きます。早々に天祥宅まで彼を送られたし』
「・・・にゃろ、それっくらい電話で言えっつーの! そんなに後ろめたいのか?!」
 少々手荒く携帯を閉じた私の口からは、悪態が零れおちる。
 今まで散々手を焼かせておいて、しかも連絡一つ入れてこなくて(ちなみに携帯は着信拒否ってたよ、あの女!)、挙句これかいッ?! もっと早く帰る日時くらい分かったんじゃないの?!
 いらっとしながらも、一週間分の掃除をする手は止めない。
 早く終えなきゃ、真弘のスイミングが待ってるし。
(・・・でも、今夜・・・かぁ・・・)
 本音を言えば、ちょっと寂しい。
 ここ数日で平助は大分この世界に慣れた。
 掃除も頼めるし、子供の世話(主に遊び相手)もできるし、簡単な買い物くらいは一人で出来るようになった。・・・・・立派な戦力になっていたのが現状だ。
 それが、もう今夜からはいなくなる。
 その事実に、ちょっと胸が空いたような感覚を覚えて、掃除機をかける手が少しだけ止まった。
(こういうのは去られる方が寂しいものだと、相場が決まってるしねぇ・・・)
 ふっと嘆息して、掃除の手を再開しつつ今後の段取りを考える。
 目まぐるしく動く脳内に入り込んでくるのは、階下で子供たちと遊ぶ平助の笑い声。
「平和・・・だなぁ・・・」



 そう、ここにいればずっと平和。
 きらきらと輝く彼の表情が曇ることはなく、誰も傷つかず・・・・・・誰も死なない。




「おい真弘っ! よせって! もう勘弁しろ!!」
「まだまだぁ! シンケンレッド! さんじょう! かくごしろ、悪のてさきめ!」
「たくまはしんけんぶるぅ!!」
「たまき、ぴんくー!」
「じゃあ、ぴんく! こうげきしろっ!!」
 ーーー階下で繰り広げられる戦いごっこの相手をしないだけで、仕事がはかどる、はかどる。
「・・・・ほんっと、平助君がいると助かるんだけどなぁ・・・」




 でも




 それはきっとムリな相談



 夢物語は続かないからこその「夢」







 彼が『ここ』を選ぶというなら、なんとかして生活環境を整えてやるだろう。
 でも、きっと彼は選ばない。
 生まれ育った場所がたとえ修羅の道だとしても、彼はためらわずに元いた世界を選ぶだろう。
 だって、あんなにもしっかりとした信念があるんだもの。
 自分のするべきことを知り、またそのために傷つくことも厭わない子だ。
 それはほんの数日生活を共にした自分にだって分かるほど、確固としたものだから。
「・・・・・頑張って、なんていうだけ野暮かな」


 しんみりする心を叱咤して、私は掃除機をかける速度を速めた。


 掃除を終え、真弘のプールも恙無く終えた午後。
 子供たちと平助を乗せた車は駅を目指していた。
 この線に乗せれば、彼女の家には一本でたどり着ける。
 そしてあちらの駅では天祥がスタンバってる手はずになっていた。
 あの後『お別れ』ということを告げた子供たちは口々に名残惜しみ、
 平助はといえばなんとなくぎこちない態度でいて。
 結果、なんとも奇妙な雰囲気が流れる車内。
「・・・あのさ」
「・・・うん?」
「俺、今までお世話になったのに、なんのお礼もできなくて、さ・・・」
 ポツリと漏れた一言に、返す言葉は端的で。
「いいよ、こっちこそ色々なもの貰ったし・・」
「・・・え?! 俺、なんもあげてねぇけど?」
 大きな瞳をくるくると回し、平助が言い募る。
「飯だって、落ち着いて腹いっぱい食わしてもらったし、布団だって屯所みたいな煎餅蒲団じゃなかったし、風呂だって・・・これはちょっと狭かったけど・・・でも、ゆったりと入れたしさ」
 む、狭くて悪かったな!これがフツーなんだよ、この世界じゃ。
 なんて、思うのは意識の表面だけ。
「・・・・・・・・・ま、ね。あっちに帰ったら、こことは違う苦労が待ってんでしょ?
じゃ、いいじゃない。ちょっと息抜き出来たって思えばさ・・・」
 ハンドルを握っているので、視線は前方固定したまま。
 目的の駅が見えてくれば、別れの時が近づく。
 しんみりしちゃう心を抱えて、でも表面には出さない鉄面皮をこんな時ばかりは重宝しつつ、車を駅に横付けた。
「さ、こっからは電車に乗り換えるよ。乗り場まで案内するから、いこ」
「で、んしゃ? って、それなんだ?!」
「ま、行きゃわかるよ。おいで」
 子供たちを降ろし、平助を伴って地下へ降りてゆく。
 切符を買って、乗り場を案内する。
 彼女の家まではほんの5駅。
「というわけで、これ持って5個目の駅で降りなさい。降りたら最初に会った彼女が待ってるから」
「5個目、だよな。5個目」
「えー! 平助にいちゃんかえっちゃうのやだぁ!!」
「もっとあそんでよー、おにいちゃん!」
「はいはい、名残惜しくてもそこまで! お兄ちゃんもおうちに帰らないと、待ってる人がいるからね。・・・心配、してるでしょ?」
「「「ええーっ! やだ、もっとにいちゃんとあそびたいーーー!!」」」
 駄々をこねる子供たち。
 …気持ちは分かる。だってこの子いい子だし。
 明るくて、屈託なくて、素直で。
 ーーーーでも、彼が今のこの時代を作ってくれたから。・・・ううん、これから作ってもらわなきゃ、今の私たちはいないから。
 だからーーー
「・・・・頑張って、平助君。君の作るものが『今』に繋がるよう、精一杯、ね」
 私が彼に対して最後に出来ること。
 それはこんなちっぽけで薄っぺらな激励の言葉をかけることだけ。
 でも・・・・
「おうっ! 任せとけ!! しっかり貫いてきてやるぜ! なんたってこの藤堂平助様だぜ!」
 微妙な表情になっていたであろう私を吹っ飛ばすような。
 そんなからりとした笑顔で、彼は応えてくれた。



 頑張れ!
 どこにいても 何をしても やることが違っても
 みんなみんな、なにかしら頑張って毎日を生きてるんだから



「君に恥じないよう・・・ううん。負けないよう、私も頑張るからさ」


 手を挙げ、ホームへと進むその後ろ姿へと呟きながら、私の非日常は終わったのだと、しみじみと感じて。


 今夜は久しぶりに遠方にいる旦那に、電話でもしてみようかなと思った。


† † † † †


……と云うわけで、これで終了かな?
ま、引き継ぎたい方はどうぞー。
「同居バトン」って、実際回ってたのは結構前(や、だから桜王子が1年止めてたからね)なのでアレですが、SS形式でやるのは、お話書くトレーニングにもなるし、いいと思うんですけどね。
うちでこの形式になったのは、単にその方が面白いからと云う、それだけの話だったんですが。だって、本館のprofileに載せてる百の質問(随分昔にやった分)も、この形式だもんなー、部分的にだけど。


しかし、寿々莉さん、全然問題なしですよ、っつーか、平ちゃんって、子どもと遊ぶ総司を馬鹿にする割に、いざ遊ぶとなると同レベルで遊ぶとこあるよねって云うか。
とりあえず、サイトの寿々莉さんとは別人、と云わぬまでも、「あァ、そうそう、寿々莉さんってこんな人だよねー」と云うのが良くわかって(笑)、めさ笑えました! そうそう、あの切り返しがねー! 流石です、寿々莉さん!
ところで、お子さんのお名前、全部「緋色」のキャラ名に変換なさったのね……気がついて、ちょっと笑えました。真弘と珠紀と拓磨かァ……ふふ。


さてさて、この項はこれにて終了。
次は――多分観劇記、か、行けなかったら阿呆話。胖之助がネタくれたからな……(怒)