小噺・小笠原胖之助の儀

「…………(怒りオーラ発散中)」
「(どたばたどた)ひ、土方さんッ」
「(むっつり)……何だ、総司、寝てたんじゃねェのか。朔明けなんだから、休んどきゃあいいのによ」
「や、寝てたんですけど、大野右仲に叩き起こされたんでさァ。えれェ剣幕で、俺の出してた備品の請求、全部通してやるから、胖之助の件何とかしてくれって」
「……(むっつり)」
「で、胖之助、何やらかしたんで……?」
「……見ろ(書類を放る)」
「はい……(読み進めていくうちに蒼褪めて)……これァ」
「大変なことをやらかしてくれたぜ」
「巡察中の越境ですか、同盟も協定も結んでねェ、公家連中の縄張りに……しかも、それで一戦やらかしてきたってのァ……(蒼白)」
「あァ(怒)。お蔭で奴ら、えれェ剣幕でねじ込んできやがったぜ。こちらに非があるってェんで、云いたい放題やりたい放題だ。見ろよ、この賠償金の請求額(怒)」
「……これァひでェや、うちの稼ぎの何ヶ月分ですよ……」
「こんなもん云うなりに払ってたら、うちはあっという間に破産しちまわァ!! (怒)」
「この額ァ適正なもんなんで?」
「いや、かなり吹っかけてきてる。ぼったくりもいいとこだぜ(怒)」
「じゃあ、どうにかその辺突っこみゃあ……」
「あのなァ、総司、相手ァ千年以上、御上に吸いついて、働きもねェのにうまい汁吸ってきやがった妖怪変化だぜ? そんな連中相手に、誰が太刀打ちできるってェんだよ!!!!! (怒)」
「あああああ(頭を抱える)……完璧、うちの失態ってェやつですかい……」
「そうだ(怒)。ったく、一番突っこませちゃあならねェとこに、わざわざネタやりやがって……」
「……えーと、現場検証はもう済んだんですか?」
「いや。これから山崎をやって調べさせるかと思ってな。(書類を取り上げ)こいつだけじゃあ、うちに不利なネタしかありやがらねェが、所詮は向こうの云い分だけしか載せてやがらねェに決まってるからな。実態がどうだったか確認して、すこしでもこっちに有利なように持ってかねェと……あァくそ!!!!! (怒)」
「……その現場検証、俺が行ってもいいですかね?」
「あァ!!?」
「や、一応俺、随従連中の保護者みてェなもんじゃねェですか。大野に頼まれたからってェわけじゃあねェですけど、一応ケツァ持たねェと、ねェ」
「(しばらく黙考)……よし、じゃあおめェに任せる。俺ァとにかく根回しだ。あちこちに声掛けとかねェとなァ……(溜息)」
「そっちァ任せましたぜ。あ、一応崎さんにも、現場ァ見といてもらって下せェよ」
「そうだな、崎ァ崎で、おめェとァ違うネタァ、拾ってこれそうだからなァ」
「まァ、せいぜい気張ってきますぜ。あんたも、根回し頑張って下せェよ」
「あァ。……ったく、胖之助の野郎め、こんな事態引き起こしてくれやがって――副官や班長格もひっくるめて、降格だ降格!!!!! (怒)」
「まァ、そこァ仕方のねェとこでしょうねェ。――ともかく、行ってきますぜ!!」
「おう、吉報待ってるぜ!」
「はいはい。――“吉報”ねェ……(溜息)」



「……土方さん(疲)」
「おう、戻ったか。――どうだ、成果ァ上がったか」
「成果って云いますか、まァ――とりあえず、実際に胖之助とあちらさんが一戦やらかしてるのを見たあたりに、もう一度話を聞いてみたんですけども」
「おう(期待)」
「確かに、先に手を出したのは胖之助、と云うか玄武隊の連中らしいんですけど、どうも、煽ったのァあちらさんらしくって」
「……(はァ……/溜息)」
「で、もっと聞いてみると、あちらさんの云い分やら調書やらと、結構齟齬がある話が聞けましてねェ。ま、うちがしくったのをいいことに、針小棒大に云ってきてやがるってとこらしいですぜ」
「よし、そんなら、ちったァ賠償額の減額交渉ができるかもだな」
「まァ、向こうさん、それほど簡単に引きゃあしねェでしょうがねェ。――で、あんたの方の、根回しはどんな具合なんですよ?」
「根回しなァ……(溜息) とにかく、今回は杉からは、はっきり“力になれねェ”っていわれちまったよ。まァ、公家連とつてのあるなァ、どっちかってェと薩摩だからなァ」
「あァ……薩摩にァ、借りァ作りたかァねェですよねェ……(遠い目)」
「それで、どんだけめんどくせェ事態になるかってェ思やァなァ……小松兄弟はともかく、斉彬公と西郷はなァ……(溜息)」
「手ぐすね引いて待ってやがりますもんねェ……しかも、近衛ってェでけェつてもお持ちですし」
「そうなんだよなァ……しかし、今回は仕方ねェかァ……(溜息)」
「……(はっとして)ちょっと待って下せェよ! 川路さんとこにゃあ、緑のタヌキ(=岩倉具視)がいたじゃねェですか! あれァどうなんです?」
「緑のタヌキな……奴も、うちにァ恨みがあるだろ、土佐の隠居と企てた一件で。……一応使いは出したがな、どうももったいぶってやがる、恩を高く売りつけようってェ肚だろ」
「どこもかしこも、うちに恩を売りたいか、うちの足を引っ張りたいか、ですか……(溜息)」
「だ(溜息)。……あとのつて、ったら……」
「……(はたと手を打ち)あァ! 川路さんとこにゃあ、もうお一方、公家連とつてのある方がおられますぜ!」
「どなただ!」
会津中将様、つまりは容保侯でさァ! あんお方ァ、京都守護職時代のつてがおありのはずですぜ! 幸い今ァ、容保侯、元会津をおん出されておいでなんで、うち的にァ、逆に話がつけやすいですぜ!」
「しかしなァ……容保侯ァ、気鬱の病で臥せりがちってェお聞きしたぜ。そんなお方に、うちのごたごたの仲裁なんぞ、お願いできるもんか……」
「駄目もとってやつでさァ! 打てる手は全部打っとかねェと!」
「まァ、確かにな。――そう云やァ思い出したんだが、確か、例の“七卿落ち”で長州に落ち延びた公家連、こっちでも長州近くにいたんじゃねェのか?」
「あァ、そう云やァ……」
「そっちなら、杉のつても使えるな? ……杉に頼んで、そっちからも手を回してもらうようにしてもらうか」
「ま、打てる手は全部打っときましょうぜ!」
「よし! ……しかし、それにしても胖之助の野郎……(怒)」
「あんた、まだ怒りが冷めやらねェんで?」
「当たり前だ! (怒) ったく、状況もよく見ねェで突っこんでいきやがって……唐津の殿の息子なんだ、その辺自重しろってェ、傅役なんぞは叩きこまなかったのかよ! (怒)」
「まァ、殿の息子って云ったって、嫡男じゃなきゃあ帝王学なんぞ学ばねェでしょうからねェ(苦笑)」
「それにしたって、上に何かあった時にゃあ、井伊のじゃあねェが、末弟だろうと跡取りんなるんだぜ? ……ったく、あれだから、蝦夷上陸ん時に、真っ先に討死しやがったんだろうが!」
「あ、そうなんですかい?」
「あァ、蝦夷での新撰組の最初の戦死が胖之助さ。――あの無鉄砲さってなァ、一度死んだくらいじゃあ治らねェのかよ……(溜息) あいつァ降格だ、降格!!!!!」
「まァまァ、ともかく、まずは根回しと現場の徹底的な再調査、ですぜ。崎さんが、調査の方ァやってくれてるんで、後はとにかく根回しでさァ」
「そ、そうだよな。……あァ、次の評議会が近いってェ時に、まったく何てことやらかしてくれやがったんだ……!(溜息/怒)」
「そうですよ、早く手ェ打たねェと、あんたも俺も、次の評議会でつるし上げですぜ?」
「わかってらァ! ……ああァ、本当に、どうしたもんかなァ……(溜息)」


† † † † †


阿呆話at地獄の六丁目〜。
予告どおり、胖之助の話。っつーか、やらかしてくれたな、胖之助……


ま、厳密には過去の胖之助の話じゃあないのですが。うん、こんなネタがちょっと……ふふふふふ(怒)。
えーと、小笠原胖之助、あるいは(箱館新撰組的には)三好胖、享年17歳、ってことは今の数え方で云えば16歳、で、それからほぼ1年経ってますので、今は17歳か――高校2年生だな。
まァ、今の感覚で云えばまだまだガキんちょなのですが、あの当時の17歳、っつーか18歳で、しかも大名の子供って云うと、結構な大人扱いのはずなんだけど……胖之助ーッ!!
ホントに、無鉄砲ってのは、一度死んだくらいじゃ治らねェんだな……(溜息)


あ、そうそう、またこの小噺の人物設定を修正+追加したのですが。
えーと、いちいち更新ごとにリンク貼るのも面倒なので、右のリンクのところに“小噺 人物表”として突っこんでます。
人物設定はテキトーに更新(小噺の更新ごとに、ではない)なので、若干ずれてる場合もありますが――どこの話の時点でかは書いてありますので、それを参考にして戴けますと。
あ、当然のことですが、小噺は“冥界小噺”なので、史実の時制上はあり得ないことがいっぱいあります(姫=阿部正弘殿39歳、なのに、松平容保さん58歳、とか)。あくまでも、時制はばらばら(=死亡時の年齢が一応の基準――“一応”ね)と云うことで。そうでなきゃ、姫が39だと、銀ちゃん2歳じゃないといけなくなっちゃうので。あくまでも冥界のお話ですから(とは云え、一部はあからさまに死亡時より若いんですが……銀ちゃん、老齢まで生きたんなら、もうちょっと落着きがあっても……!)。


さてさて。
そうそう、何かまだまだ増えつつある幕末、っつーか新選組漫画ですが。
えーと、こないだ、中綴じの青年コミックス(どれだっけ)で、投稿作品の中の優秀作か何か、で新撰組ものが……! 鬼が“豊玉先生”とか呼ばれてました(笑)。あはははは。
あと、隔月刊の「Oh! Super JUMP」で、新たな新撰組ものが……! 冲方丁×野口賢サンクチュアリ―幕末異神―」(サブタイ、ビミョーに違うかも)、何やらオカルト系の新撰組。っても、「無頼」(岩崎陽子)とは違うタイプ、もっと薄暗いって云うか、ウブカタだなーって云うか、そう云うカンジのオカルトですが。
かっちゃんが、どうやら女性らしい――“近藤いさみ”と云う女性が出てました。何か、新選組ゴーストバスターズみたいなカンジなのか??? 初回だけではいろいろ判然と致しません。とりあえず、今後に期待。って、次回の雑誌発売、5月下旬なんだよね……遠いわ……
まァ、漫画は漫画で一向構わんので、できれば小説でも書いてください、って、それはメディアミックスでもしない限りないんだろうなァ――「ピルグリム・イェーガー」小説ないもんねェ……ちッ。
しかし、ウブカタで新撰組かァ……いくら時代ものづいてるとは云え、何かビミョーな感じは否めません。や、「マルドゥック」でハマった人間なので。えェ。昔鬼のように売りましたからねェ。


あ、こないだの感想で書いた「ICHI」(篠原花那 講談社)、1巻出てた――しかも重版かかってた。売れてるんだ、へェ〜。
えーと、やはり座頭市の話ですね。「原作:子母澤寛」だって。
かっちゃんがカッコいい(渋すぎる!)、伊庭はジャ×ーズみたいに可愛い――いやいやいや(苦笑)。鬼はガラが悪く、総司は怖い。ふふふ、何か敵キャラとか、若干「銀/魂」を思い出す、のはグラサンのせいか。
清河さんやら桂さんやら出てますが、さて、今後どういう展開になってくのか――まァ、原作(=子母澤寛の短編)読んだってわかりゃあしないんだろうけどね。どこまであの辺とよりそっていくのかな〜。


高橋ツトム「SHIDOOH」、か、勝さんが……!
何時の間にやら第二次長州征伐が終わってた、のはともかくとして、「それがどうした」って――か、かァッこイイ……♥♥♥
ちなみに↑この科白、龍馬××(←流石に伏字)の算段をどどんとしてた勝さんが、「あの男はあなたの弟子だろう」って云われて返した言葉。カッコイー! そう、勝さんはそうでなきゃ! どんなに愛しんだ相手でも、目的のためとあらば切り捨てることも厭わない、そう云うとこあるよね、勝さん!
で、相手が実際に死んだあとで、人知れず泣いてたりしたら嬉しい。まァ、泣かないと思うけどさ、斬り捨てたって考えたら泣けないと思うけどさ。うん。
今後、翔殿と源ちゃんがどうなってくのか、何げにちまちま出てる新撰組(あ、総司は寝ついてた)がどこまでひっぱられるのか、その辺凄くたのしみです。


「歳三 梅いちりん」は、いよいよクライマックス(いや、今、別冊文藝の「土方歳三」読み返してたら、何か次決闘に突入っぽい流れであることに気がついたので)。
そう云えば、こないだの回に、ちらっと鳥さんが出てたよね――ふふ。
ところで、明日発売(←え)のおた系ムックの「漫画雑誌百冊切り」的企画の中で、この話がちらっと取り上げられてた(っつーか、評者(3名)のうちの一人がネタにしてたと云うべきか)のですが。この評者の人、新撰組好きなのかな、鬼、総司、伊庭を「認めん!」とか息巻いてましたが。
ふふふ、夢は見るもんじゃないぜ、特に総司にはね……っつーか、あの総司充分可愛いけどな? 黒鉄さんの総司が理想だと云うならともかくとして。
そうそう、「風光る」は――何か語る気が今唐突に失せた。多分、内海さんのせい。いや、こないだちょっと、つみれ汁と眉間のしわの話が……まァ何でもいいや(投げやり)。


あと、村上もとかの「仁〜JIN〜」、×××化だって!
うっそ、どこの局で、どんなキャストでやるんだ、っつーか、主役どうでもいいから勝さんのキャスト! とか、勝仲間のMさんと盛り上がってましたが!
は、早く次のSuper Jump! って、キャストとかは次々号以降なんだろうな……ちェー。


私ごとですが、何故か俳句発句和歌短歌、の類をやらねばならなくなりました。やりたいとかじゃなく、やらねばならぬ、と。
だからさー、私の書けるのは話とビジネス文書とかで、詩歌の類は新体詩がせいぜいだってーの! 俳句発句和歌短歌、は、この人生××年の間では、一遍も作ったことないんだよー!! そういや、学校でも作る機会なかったわ……それで一体どうしろと(泣)。
ううう、沖田番まわりは結構御上手な方が多いから、その辺にご教授願おうかしら……
くっそ、下手なのわかってるくせにー!!! ぅおりゃあぁぁァァ!!!!!
…………はァ…………がっくり↓(泣)。


この項終了。
次は、お待たせ、鬼の北海行、いよいよ蝦夷全島制圧?