小噺・斎藤一の儀 其ノ三

「いやァ、参りましたぜ、土方さん」
「あ? どうした」
「いえね、今ちょっと一ちゃんが茶目っ気出しまして」
「……おう(厭な予感)」
「まァ、いつもみてェに厠から出てきた人の後ろに立ったわけですよ」
「……あァ(ますます厭な予感)」
「でねェ、まァあんたとか俺とかだったら、“何がしてェんだ”とかで済むとこが、相手が秋月さんだったんで、こう、ねェ」
「あァ……先刻の秋月さんの怒鳴り声ァ、もしやそれか」
「そうですよ。秋月さん、跳ね上がって、手水場越えて、庭先へ裸足で飛び出しちまったんで。で、振りかえってやっと一ちゃんの仕業だってェ知れたもんで、あの騒ぎでさァ」
「またかよ……(がっくり)」
「まったく、秋月さんだって、初めてやられるわけじゃあねェんだし、そう騒ぎ立てるこたァねェでしょうに、ねェ?」
「待て、それァ違うだろうが!」
「えェ? だって、あんただって、“またかよ”って云ってるじゃねェですかい」
「それァ、斎藤にだ! ……あれァ、結構ドッキリするもんだぜ。厠で用足した後ってな、結構、こう、皆脱力してるだろう。そうしてるところに、いきなり背後に立たれて、“困りますな、こうも簡単に背後を取られるようでは”とか云われてみろ。――秋月さんでなくたってェ、すげェ叫び声上げたくならァ」
「って、それァあんたがよく云われてることですよねェ」
「あれ実際やられてみろ、心の臓が止まるかと思うぜ」
「まァあんた、兎の心臓ですもんねェ」
「俺が兎なんじゃねェ、斎藤の野郎がおかしいんだ!」
「えェ? そんなこたァねぇはずですぜ。その証拠に、俺ァちっとも驚きゃあしませんもの」
「おめェは、あいつのあれに慣れすぎてやがんだ!」
「えェ? でも、万ちゃんも服部も大丈夫ですぜ? あんたがびくつき過ぎなんじゃあねェですかい?」
「おめェらなんぞと一緒にするな! 大体、おめェらが普通だってんなら、斎藤がああも頻繁に、源さんに呼び出しくらったりするもんかよ!」
「あんたの基準ァそれなんですかい。……まァねェ、確かに一ちゃん、いっつも源さんに呼び出されて、じっと正座させられてますもんねェ」
「しかし、斎藤もこりねェなァ――あんだけしょっちゅう源さんに叱り飛ばされてりゃあ、普通はちったァ落ち着いてきそうなもんだが」
「いやァ? 最近は結構落ち着いてきましたぜ?」
「あァ? どこがだよ」
「や、こないだ、一ちゃんの奥さんが、こっちに来てんのが見つかったじゃねェですかい」
「あァ、時尾殿とか云ったっけか」
「そうですよ。こないだ、会津の皆さんがどっと来られた時に、一緒に来てたみてェで。それで最近、一ちゃん、ちっとですけど落ち着いてきた感じですぜ」
「……まァ確かに、物陰から飛び出して、いきなり斬りかかって来なくなった分だけ落ち着いた――って云っていいもんか、俺にァわからねェぜ……」
「落ち着いてきましたって! (力説) その証拠に、最近一ちゃん、花街に遊びに行く回数減ったじゃあねェですかい」
「おめェの“落ち着いた”の基準はそこかよ! ……まァしかし、あれだな、斎藤の女房ってな、どんな女傑かと思いきや……」
「結構華奢でおとなしげな感じに見えますよねェ。でも、あれで中々芯が強いらしいですぜ」
「まァ、そうだろうなァ。会津の女だろ? それに、息子に“士道不覚悟”とか云って棒きれで撃ちかかるようなのを旦那に持つんだ、生半可な女じゃあ、続かねェよなァ」
「まァでも、あんたみてェな“妲妃”を旦那に持とうってェ姐さんの気持ちもわかりませんがねェ」
「何だと! (怒)」
「おっと、くわばらくわばら」
「総司、てめェ!! (襟のあわせを捉えようとする)」
「おおっと(かわす)。……そろそろ源さんの説教が終わったか、確かめに行ってきまさァ〜(と云いながら走り去る)」
「おい、総司!! ……畜生、好き放題云いっ放していきやがって……! (握り拳)」


† † † † †


阿呆話at地獄の三丁目〜。
原点に戻った、か?


えェっと、一ちゃんの奥さん登場。名前だけですが。
そう云やァ、時尾さんとの結婚って、容保さんが仲人だったんだっけ? ……そりゃあ、容保さんに頭が上がらないはずさ、一ちゃん。
まァ、それ以前から、一ちゃんって容保さんラヴだったけど――仲人やってもらって、嬉しかったろう。天にも昇る気持ちだったろう。ふふふふふ……
あ、会津の大量流入により、白虎隊メンバー揃いました――っても、こっちに四人、あっちに残り、って感じですが。ゆきちゃんたちは、もう会津の子どもじゃない……ふてぶてし過ぎます……(汗)
西郷頼母さんの一家も揃ってます。
でもって、それに伴い、容保さんは、川路さんのところから、会津方に復帰いたしました。勢力図がいろいろ動く冥界でございます――まァ、どっかで引っかかってると、来るのが遅れたりするからねー。


世間的にはシルバーウィークとやらに突入ですが。
……シルバーウィークなんて大嫌いだ! っつーか、何、あの前倒しの嵐! ちょっと疲労困憊し過ぎてました。だから更新遅かったの、と云い訳をしておく。でも、マジ疲れた……
まァ今回は、Tハンの大英断だか何だかのお蔭で、23日は通常どおり新刊の発売があるのですが(しかし、うちの担当のN販ちゃんは23日休みらしいですよ――働けよ!!)。
っつーか、もういい加減、例の“ハッピーマンデー”とやらは止めて戴きたい。あれのお蔭で、月曜発売の週刊誌の前倒しor後ろ倒しがさァ……(ビジネス誌は基本後ろ倒し)
民.主.党さん、その辺も宜しく検討お願い致します。


そう云えば、まだまだ新撰組の波が来ているようで。
望月三起也「俺の新選組」が、ぶんか社から文庫上下巻で刊行(かるい店内賞与が出たので買っちゃいました)――のみならず、は? 10月にも何か出るらしいですよ。初文庫化、っつーか、そんなん出てたの知らなかったよ、「ダンダラ新選組」。何だそれ。
そう云えば、23日発売(?)のコミックシルフで、「薄桜鬼」のコミカライズ短編Ver.が2本掲載らしいのですが――片っぽの沖田総司篇、ち、ちょっと、篠原花那って、オイ、「ICHI」はどうした……!
いや、わかってますよ、隔号連載だから暇があるのはわかってますよ。でもさ……!
って、こないだバンチか何かで犬の調教師(?)の話を短期集中連載してた時には、特に何も思わなかったんだけど――何か、「薄桜鬼」のコミカライズだと、「仕事して!」って気分になるのは、二次創作っぽく感じるからかしら……それも確かに仕事のはずなんだけどなァ……
「薄桜鬼」本編は、誰だったか他の方がコミカライズするらしいですが。
どうでもいいが、「薄桜鬼」アニメ化の詳細はどうなってるんでしょう。くっ、また「JIN」の時みたいに、しばらくやきもきさせられるのかしら……でも、詳細わかっても、多分アニメは見ないと思うけどね、自分……「BASARA」の悲劇再び、はマジ勘弁……


さてさて、この項終了。
次は鬼の北海行――そろそろ酒井孫八郎放り出して、中島さんのナンパをしたい……