穴埋め的に。

最近の読書ノート。


殺生石」 (富樫倫太郎 カッパノベルス)
他所サイト様で、箱館戦争がらみだと書いてあったので+ブッ××フで¥105-だったので、買ってみた本。
作者は「陰陽寮」とか書いた人だとは知ってたのですが、読むのは初めて。
えーと、結構楽しく読めました。安倍泰成とか××・×××××××とか、いろいろ出てきて楽しかったです。
ただ、以前「新帝都物語 維新国生み編」を読んでしまっていたせいか、こっちは若干もの足りないカンジが致しました。いえ、ほら、蘊蓄とか蘊蓄とかがね。書かれたのはこっちの方が先なのでアレなのですが――まァ、アラマタ先生の博覧強記と較べちゃうとね……
でもって、アイヌの恋人同士とか? が出張っていたのが、何となく「王道の狗」を思い出させたりとか。
楽しいのは楽しかった、けど、やっぱり軽いカンジがするのは否めませんね……


「美姫血戦 松前パン屋事始異聞」 (富樫倫太郎 実業之日本社)
上と同じ作者ですが、話の方向性はまったく異なり、割と史実に沿っている――はず。
妖怪変化や秘密結社は出てきません。
松前で、人見さん(松前奉行の)からパン作りを命じられた藤吉の奮戦、と並行して、松前藩前家老の姫君の仇討の物語が進行していきます。“美姫血戦”ってのが、姫様の方の話なのですね。
えーとえーと、気持ちはわからないでもないけど、ちょっとこの二つの話が一緒ってのは、散漫なカンジになっちゃったんじゃないかと思いました。
姫様だけで、もっと骨太の戦闘シーンとか入れるか、藤吉のパン修行のアレコレメインなら、裏側から見た各国と五稜郭との政治的駆け引きとかそういうのか、に分けた方が良かったんじゃないのかなァ。ちょっと“お勧め!”とは云い難いです……あ、人見さんと伊庭のファン的にはいいんじゃないかと思いますが。


箱館売ります」 (富樫倫太郎 実業之日本社)
図書館から借りたので、駆足で読了。なので、若干記憶がアヤシイところが多々あります。
こちらは、蝦夷地の土地の賃借に絡むあれやこれやの騒動、なのですが――ううぅん、またメイソンが絡んできたりとかしてるよ。富樫さん、お好きですか、メイソン? ま、こっちのメイソンは、一種のロータリークラブ的なアレコレで、オカルティスムとは若干距離がある感じなのですが。や、イニシエーションによる位階のアレコレとかは、もちろん出てきますけどね。
それはともかく、ロシアの“第三部”所属の工作員(?)ユーリイが違和感。や、キャラ立てがっつーよりも、時代設定が?
何かこの人、このまま現代もののスパイ小説とかに出てきてもいいカンジじゃね? っつーか、何だろう、思考がさ、まるっきり現代人なんだよね、っつーか現代ロシアでも違和感ないって云うか。帝政ロシアは、やっぱ現代のロシア共和国とは意識が違うでしょう。第一、帝政ロシアの軍人(だよね?)なら、ほぼ貴族なんじゃなかったっけ? 帝政下の貴族と、共和制下の軍人とでは、意識って全然違うと思うんだけど、その辺がまったくスルーっぽいカンジで、そこで頭の切り替えがし難かったです。
話としては一番まとまってたけど――その辺のアレコレ含めると、「殺生石」が一番なのかな。ううむ。
しかし、同じ舞台で、ほぼ同じ人間を使って、これだけ違うシチュエーションで話が作れるってのは、それはそれで凄い、のか……


「炎環」 (永井路子 文春文庫)
……すみません、鎌倉です。
佐殿が魔性! って、どこぞのサイトで見たので読んでみたのですが。
えーと、御免、「乙女の日本史」の佐殿の方が魔性だった(笑)。
っつーか、この話、昔の大河ドラマ草燃える」の原作らしいのです(これは流石に記憶がないわ)が。
えーと、阿波局がヒドイ! こんな女いたらやだな。
政子は割と普通の女だ――個人的には、政子って篤子さん(えェ、天璋院)みたいなタイプだと思ってたんだけど――永井先生の中では違うのかしら。
全体的に、自分解釈とかなり人物設定が違うので、違和感感じつつ読んでたカンジで。あんまり楽しくはなかったなァ。


義経」 (司馬遼太郎 文春文庫)
でもって司馬遼。
流石! の人物構築。って云うか、この義経サイコーだ! いや、悲劇のヒーロー義経を期待すると超↓ガッカリなのですが、しかし個人的にはかなり納得。
でもって、佐殿もまァまァ――って云うか、佐殿は(「燃えよ剣」の鬼よりは似てると思うけど)若干女性っぽさが足りないと云うか、男性的過ぎると云うか。永井路子の佐殿よりは似てると思うけど、もっと! もっとこう、子供っぽいところも欲しかったね……
個人的に、平知盛が超↑カッコよかった! 某遥かの知盛は知りませんが、司馬遼の知盛、カッコイイ……! 惚れます。
っつーか、司馬遼の弁慶は賢いんだけど、その癖ちっともいろいろ見えてないのが、何ともかんとも……結局、義経の敗因(あ、対佐殿です)って、政治をわかる人間がまったく周囲にいなかった、ってことに尽きるんじゃないのかしら……
個人的にはすごく面白かった、けど、ヒーロー義経スキーさんには、なかなか厳しい話じゃないかな……


街道をゆく 42 三浦半島記」 (司馬遼太郎 朝日文庫)
司馬遼でも、こちらは紀行。
三浦半島記”なのに、何故かずっと、隣りの伊豆半島の佐殿の考察をしてる――しかも、一冊の2/3くらい?
愛なのか、と思っても、確か司馬遼って、角川文庫の「日本史探訪」で、「義経が好き」的なことを云っていた(対談相手の吉屋信子先生は、平家の姫君たちに感情移入する的なことをおっしゃておられた――流石)ので、やっぱ佐殿には、好き嫌いとかと違う興味の向け方なのかなァ。
とは云え、読み物としては、この本は十二分に面白かったです。三浦半島を歩いてるのに、伊豆の佐殿がどうしたこうしたって、しかもリアルタイムで佐殿がいるような調子で書いてるって云う。
もちろん、司馬遼ですから、歴史的事実から飛躍したところで考えてるところも多々あって、そこが“流石は小説家”って感じなのですが、それにしても、これは中々面白いですよね。「街道をゆく」の中でも晩年近くのものだからか、あるいは単に興味の方向性の問題なのか、これだけ一人の人間のことに紙幅を費やしてるのって、他になかったような気が……ま、私の読んだ他の巻は、韓のくに紀行と越前の諸道くらいなので、それに較べると移動範囲も狭いし、地理的条件として鎌倉を擁するところだけに、その地に初の軍事政権(でしょ)を開いた佐殿に意識が向かうのは当然なのかもしれませんがね。
とりあえず、下手な小説よりよっぽど面白いです。これのお蔭で、三浦大介(だいすけ、ではなく、おおすけ)さんが好きになったかも。お勧め。


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あ、「あぶない丘の家」(萩尾望都 小学館漫画文庫)もあったんだった……
これの作中、義経ファンの女の子が、司馬遼を読んだとか云ってるシーンがあったけど、ああ云う無批判な九郎たんファンには、司馬遼の「義経」は厳しいものがあるんじゃないかと思いましたよ。
話自体は面白かったです。いや、全体としてはガタガタっぽいんだけど、「あぶない壇ノ浦」はね。佐殿もっとイケメンだよ、とか思いつつ、いろんな関係性とかは近いのかも? 義経スキーでも、これの佐殿はまァまァいけるんじゃ、と思いましたよ。


あと、「マンガ日本史」(朝日新聞出版)11号の佐殿! 今時のすくえに系っぽい絵柄で佐殿! 前号の九郎たんが大島やすいちで、佐殿が大変残念なカンジだったので、麗しく性格の歪んだ佐殿は大歓迎でしたが、職場では「義経がこの絵の方が良かった〜!」と大不評でした。
まァしかし、このシリーズ全体的に、予想を裏切る作家振り分けてくるからなー。道長船戸明里さん(好き♥)とか、清盛の住吉文子さんとか、義政の泯民(字が出ない)さんとかね。中大兄のシュガー佐藤とかは、まァ懐かし学習漫画系ですけども。それはそれでいいんですけども。
これは、とにかく6月予定の勝さん! ふふふ、あと半年切ったわね……


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しかし、興味の主軸が源平に移った、ら、途端に「風光る」につきあう気ががたっと失せてます。いや、最近の展開もちょっとかなりアレだしさ。
佐殿のお蔭で場所もなくなってきたし、そろそろ単行本処分しようかしら。
他の幕末漫画(「SIDOOH」とか「JIN〜仁〜」とか「天翔の龍馬」とか「武死道」とか)は、結構作家さんや話自体が好きで買ってるからアレとしても(早く「サンクチュアリ」も出てほしいわ……)、「風光る」はそう云うのじゃなかったので、興味が移ると最初に切りたくなるのはわかってたんだけど――あ、最初は「アサギ」だったか。てへ。
まァともかく、巻数も馬鹿んならんしね。
そう云う枠だと、小説でも何人か切り捨てていいのがあるんだけどなァ。ぶっちゃけ司馬遼と中場利一五十嵐貴久荒俣宏くらいで良いんじゃないかなァ。あ、子母澤寛はKEEPしとかなきゃですね。小吉パパ! 勝スキーのバイブルですよね!
勝さんと云えば、十日に松岡玲氏のバカ高い「勝海舟」(筑摩書房)が出る――お値段¥5,200-くらいだった、はず。900頁overだそうですから、仕方ないんだけども。


しかし、佐殿は本当に本がない――こないだのたっきーの「義経」の時も、佐殿関連書はほとんど出なかったんじゃ? ってくらいの流通点数のなさ。
こないだ元の職場の人文書を覗いてきたのですが、九郎たんはいっぱいいたけど、佐殿は2、3しか見かけず、大変淋しい気分でいっぱいになりました。吉川弘文館人物叢書にもいないってどうよ!
……とりあえず、北欧神話関連で、「ヘイムスクリングラ」と「アイスランド・サガ」が、分冊ですが廉価で出てたのに狂喜乱舞致しました。特に「ヘイムスクリングラ」! うひゃー、この辺求めて、国会図書館や都立図書館に通ったのが夢のようですね……
とりあえず、分冊だし、ちまちまと集めていきたいな……


さてさて、この項終了。
明日っから旅!