倉敷・鞆の浦行 その二

と云うわけで、倉敷&鞆の浦行、二日目。
興味とお暇がおありの方は、続きからどうぞ〜。


二日目の朝は、「打城丸」の話でスタート。
「打城丸」と云うのは、昨日ご一緒した姉妹様の姉君の方が以前見た夢で、顔が鬼瓦な機関車とーますみたいなものです。沖田番が運転して、私の指示で家を絞め潰したり(←それ機関車か?)すると云う。
で、沖田番は、見たい夢の条件を書いたメモを枕の下に入れて眠ると、その条件を満たす夢が見れると云う特技の持ち主なのですが。
それで↑の「打城丸」が見てみたいと思ったのですが、表記がわからなかったので「だじょうまる」と書いたらト×ンス×ォーマーみたいなロボが出てきた! とか云って悔しがっていたのです。
で、昨日漢字を教えて戴いたので、こんどこそ! と云ってメモを枕の下にして眠ったのですが。
えー、メモの内容がね、私の趣味を加算して、“打城丸 オリジナル ver.2.0.5.002 1183年 鎌倉”と云うメモにしてみたわけですよ。
ったら、いきなり夢の中で佐殿に遭遇。勘三郎とか橋之助系のイケメン、しかしもっと線がしっかりとしていて目つきが悪く、かつそれでにっこりと笑うので、「……胡散臭ェー」ってカンジの佐殿。
と、何かロボトミー手術済み? の、「はい、兄上」とかしか云わない九郎たん(嵐の大野くんにたっきー足して、もっとお馬鹿にしたみたいな……一応ジャニ系?)、やっぱり処理済(笑……えねェ)のゴリマッチョ、しかし声はゆう×りん、な弁慶、が居並ぶ鎌倉。
で、佐殿が「よくぞ来た、義経二号」とか云うらしいのですね。もちろん、義経二号=沖田番です。よく見ると、佐殿の傍に何か見た顔――北村×輝的な人が。これがどうやら梶原景時らしい。
沖田番が「あ、景勝」(それは役名だ!)と云うと、「貴殿は、ひとの名前も憶えられぬのか」とか厭味攻撃――うゥん、流石は梶原。
ともかく佐殿がふたりを制し、「打城丸で、平家と後白河法皇を討つのだ」とか云うらしい(沖田番「え、後白河討っちゃうんだ」)。サポートに、弁慶二号と云う名の仁王系ガンジャックをつけてくれます。
でもって、由比ガ浜の砂浜が割れて、中からせり上がってくるのは人型のメカ(?)――寄木と板金細工のトラ×スフォー×ー、打城丸です。
股座のところにドアがあって、スライドして中に入れるのですが、「だじょうまる」はエレベーターだったのに、この「打城丸」は螺旋階段……コックピットももちろん木製ですが、ちゃんとハンドル(寄木!)もあり、正面のコンソールとかは、ちゃんとしたメカらしい。しかし、頭上に神棚的なものがあったり、コンソールあたりやシートなんかには、運慶・快慶の名前がある――いや、確かにこの時代だけどさ!
弁慶二号曰く「これは超古代のテクノロジーで……」――超古代! でもって、弁慶二号自体は、やっぱり超古代のデバイスなのだとか。打城丸は平安時代から開発が進められていたのですが、近頃やっと完成し、源平の戦いに導入されることになったのだそうで。
しかし、唯一操縦可能だった九郎たんが、ロボトミーのお蔭で役立たずになり、代わりに沖田番が投入されることになったらしい。
でも、九郎たんそこにいますが、佐殿? ――「これはこれでいいのだ。やっと従順になったからな」 ……何か淋しい感じですね、自分の云うことに何でも頷くお人形さんを手にしたいい大人って。
まァ、幸せだってんならいいけどね、と云いつつ、沖田番は打城丸を発進させ。
ふと、私と姉妹様の姿を探すと、佐殿の向こうで、荷馬車的な車の上で手を振る三人の姿が――「久住殿には、そなたを借り受ける許可を得ていてな」とおっしゃる佐殿。
レンタルOKなんだ! とか驚愕しつつ、破れかぶれに発進した打城丸と沖田番。さァ、無事に平家と後白河法皇を討てるのか!?


……と云うところで、この日は目が醒めたらしい。
朝一で聞いて、爆笑。
「はい、兄上」しか云わない九郎たんと、それで満足そうな佐殿って! いや、それよりも、景勝で景時! (混乱しそう) 中身は山崎烝的腹黒男っぽい(でもまァ、梶原景時と崎って似てるよね、性格が)ですが、しかし目がシャキ! っつーか、あの顔であの性格かァ……それはちょっとやだなァ。佐殿はイケメンでよかったけど(←そこか!?)。
しかし、佐殿――沖田番、はっきり云って、九郎たんよりよっぽど扱い難いけど、その辺大丈夫か? 梶原軍監だと思うけど、沖田番、かなり無茶だし命令も(自分が認めた相手以外のは)聞かないぞ? 多少は考慮するところもあるけど、自他の実力の違いなんか考えに入れないで走っちゃったりするぞ? 本当にいいのか?
……まァ、佐殿がいいんなら、それで一向構わんけどさァ。
沖田番は、爆笑する私を見て、「よし、笑いましたね」ってガッツポーズしてた――笑うと免疫力が上がるから、って、それはそれでどうなの。


ともかくも起床。
8時くらいに下へ下りて朝食を戴く。モーニングブッフェですね。
えーと、結構美味しかったです。京都ロイヤルホテル&スパほどはいろいろ(品数とか)いきませんでしたが、それでも十二分に良かった。
沖田番はただ今海藻類が食べられない(ヨードを採っちゃいかんらしい)ので、味噌汁の若布が分けてあったのに喜んでました。うん、美味しかったよ。
食後のコーヒーまで戴き、9時くらいまで喋ってから、身支度を整えて、今日は倉敷市内。っつーかまァ美観地区ですね。
とっぱな大原美術館から攻略します。昨日姉妹様が、「特に貸し出し中の作品はなさそう」とおっしゃっておられたので、気を良くして参ります。
ひとり¥1,000-(そして、当日中なら何度でも入館可能)で、バッグの大きい沖田番は、手荷物預かり所に預けてから入館。
正面入り口を入ると、まずは児島虎次郎の「和服を着たベルギーの少女」。沖田番はこの絵が好きらしい。続いて、白樺派美術館から永久貸与されているロダンの彫刻が。ちなみにこの“白樺派美術館”、名前のみで、建物があったことはないらしい――企画倒れになったけど、作品は集めてたので、大原美術館で代わりに展示してもらっているとのこと。
1階は割と軽めのものが多く、水彩画やデッサン、スケッチなどが多め。さらっとみて、次は2階。
2階は結構いろいろ――アマン=ジャンの「髪」や、7枚構成の大作、フレデリックの「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」(これは祭壇画だったんじゃないのかな〜、ホントに凄い)、有名なモネの睡蓮もここです。
他にコローの風景画やなんかもあったりして、結構面白い。しかし、目を引く作品ってのは、やっぱり何かが違うんだろうなァ。いくつか並んでいても、ふっと目がそこに行く絵がいくつかあって、大体それは評価の定まっている作品だったりするんですよね。私はコローの風景画はすごく好きだけど、目を引くと云う意味ではゴーギャンの絵やモネの絵の方が上だもんな。
ただまァ、目を引く作品って云うのは、長いこと見ていると疲れるので、そう云う意味ではコローの方がいい、と云う見方もありますけどね。安らげると云うか。うん、私は好き。


でもって、連絡通路を経て、新しめの建物の中へ――今回の自分的目玉は、こっちにありました。
エル・グレコの「受胎告知」。これだけ単品で、別室での展示です。照明も、ここだけ普通の日本の美術館並み(他の部屋は、ヨーロッパの展示室並に明るいのです)。
ウフィッツィでも(エル・グレコの他の絵は)もちろん見ましたが、確かにこの「受胎告知」はいいですね。いかにもマニエリスムなんだけど、教会で見るのはもしかしたら違和感なんだけど、個人でそっと祈る時とかにあったらいいな、と云うか。奇跡の瞬間を切り取ったカンジで、このテーマに限って云うなら、先生のよりもいいと思います。
しかし、この絵、すごくスペイン的――エル・グレコ=“ギリシア人”ってことなんだけど、その名前とは裏腹に、ベラスケスよりももっとスペイン的なカンジがしますよね。多分、移住してきた外国人が、土地の人間よりもなお一層土着的なものを吸収していくのに似てる、のかも。スペイン的と云って悪ければ、地中海的? ファナティックなところと燃え上がる熱情の絶妙なバランスが、エル・グレコだよなァと思いますね。フィレンツェとかのイタリア諸都市は、もっとぬるいカソリックだよな。


まったりと「受胎告知」を見て、それから次の間へ。ここにはモローやマティスなんかが展示されてます。
一時ほど好きじゃなくなったんだけど、やっぱりモローの絵は目を引きますね。しかし、サロメ(多分)が男みたいだ……みけらにょろの女体ほどではないけれど、胸はないし、腰もがっしりしてる。色遣いの妙は相変わらず。やっぱり嫌いじゃないなァ。
マティスも目を引く、けど、好みから云えばシンプル過ぎるかも。キリコの絵は、ここにあったのはあんまり好きじゃなかった。あと、作者忘れたけど烏の絵? が、キリストの磔刑図みたいに見えて、結構気になりました。
階下に下りて、現代アートの部屋へ。ここはピカソかな。やっぱりバランスが絶妙。
他の絵が不快感を強める感じだったので、沖田番が急かして、ここら辺はさらっと流し見で。


別館の近現代日本絵画と今のアートを流し見(藤島武二? か何かの男性の絵が気に入りました――キリストかと思ったら、ただのおっさんだったんだけど)、次は工芸・東洋館へ。
これがね――バーナード・リーチが良かった! 最近六本木で遺作展があったルーシー・リーと云う女流陶芸家(ってのも変なカンジですが)は、最初バーナード・リーチの門を叩いて、やっぱり違うと独自の道を行ったらしいのですが――そりゃそうだろうな、バーナード・リーチは、完璧に古い日本の陶芸と、もっと古いギリシアの陶芸の混淆だもん。北の方の人には合わないと思う。
しかし、バーナード・リーチのは本当に良かった。香合に使えそうな蓋物の器とか、志野っぽい器とか、はたまたギリシアっぽい壺だとか。古い、非常に型にはまったようなものを作っているのに、すべてのバランスが絶妙と云うか。うん、似たような器は死ぬほどあると思うけど、でもこれは、その中に埋もれてしまいはしないだろうなァ。魅力的な器でした。あんなのがうちにあったら良かったのに。
もちろん、他の陶芸作品も良かったんだけど、バーナード・リーチは別格。好みかもしれないけど、別格です。


あと、ここでまとまって見たのが棟方志功。版画で有名な人ですね。
この人は、肉筆画もあるけど、やっぱり版画ですよね。黒のいろがやわらかいんです。でもって、差したいろのグラデーションがまたきれい。いろのやわらかさ、って云うのは、やっぱり刷り上がったものを生で見るからこそ、なんでしょうね。いろも、やわらかいと云っても鮮やかでもあり、明るい桃色からすこしくすんだ青や緑へ、にじむように移り変わる様がまた良いのです。
ここでも満足し、あとはさらっと。
唐三彩やインドやインドネシアの仏像、古代中国の青銅器なんかを見て、外へ。
満足満足。


って、見るもの多かったから、出たら12時だよ!
お昼どうしよう、とか云いながら、倉敷川まわりをぐるっとまわってみる。
備前焼のお店を覗いてみたり(しかし、お茶で使えそうなのでぴんとくるのはない)、雑貨屋をひやかしてみたり。
ふらっと入った酒屋で、沖田番が、琉球グラス入りの日本酒に引っかかる――「こ×りっぷ」にも載ってたアレです。ためつすがめつして、透明な方のピッチャーに入っているものを購入。しかし、重いし割りそうなので、暫く預かってもらうことに。
でもってさらにたらたらと歩き、帆布とデニムに引かれて倉敷屋と云うお店に。何故かトルコの物品も扱っているお店なのですが、ここで投げ売りの備前焼を発見。沖田番の迷っていたピッチャーっぽい器が¥1,500-とかなりお安い(他所のお店では¥3,000-だった……)。ちょっと色味が悪いのですが、これぐらいなら! とうきうき手に取る沖田番。
私はその横の、¥500-の盃に目が――ぐい飲みではなく、本当に「盃」ってカンジで脚の高い酒盃なのです。しかも、器の内側って云うか上部って云うか、に金色っぽい円環が浮き上がっていて、皆既食の太陽のようにも見える……


「こ、これ、良いなァ……」
「買っちまえばいいじゃねェですかい」
「だが、これで盃とか幾つめだよ(会津でも2つ買ってるしよ……)」
「こんな小っせェもん、邪魔にゃあなりませんよ。……あんたが買わねェんなら、俺が買いますぜ?」
「(焦)……やっぱ買う」


とか云って、結局GET。備前の酒盃は酒の味を変える(土の中に含まれている鉄分の関係で)と云いますが、まァまァ、いいや。新しい盃〜♪
沖田番は、徳利っつーかピッチャーっつーか、そう云うのと、煎茶茶碗(っても、ぐい飲みにしてもよさそうな)を2つGET。合わせても¥2,500-だと喜んでいる。


でもって、そろそろおなかも空いてきたので(何しろ1時過ぎ)、昨日目をつけておいたうなぎ屋へ。吉井旅館併設のお店です。
中へ入ると、お客は我々だけ――まァ、ランチのコースで¥3,500-だからにゃ。
でも、お値段に違わず美味しかった……! うなぎ入りの卵焼きと酢のもの、肝吸いとうな重……どれも美味。これは当たりだ。
ゆずのシャーベットがデザートについてきましたが、量も結構あり、これはいいです。
「時期的にこんな(閑散とした)感じで……」とか、お店の人は苦笑しながら云ってましたが、うん、でも良かった。落ち着いて食べられたしね。うなぎ好きで、懐に余裕のある方は是非! 旨々です。


うなぎ屋を出たら、また散策。っても、お酒取りに行かなきゃなんですが。
そうそう、沖田番の母上のミッションで、豚革のブローチの売っているお店を探したのでした。「美観地区にあるお店」って、情報それだけかよ! とか云いながら、川まわりのお店を覗いて歩いていると、小さい間口のお店に、“革製品、クラフト”とか書いてある。ここか!? と思って入ってみると、ビンゴでした。
沖田番の母上はいろいろと難しい(ホントにいろいろ……)ので、お土産買って宥めようと云うことらしい――ブローチを2種GET。
でもまァ、確かに豚革のブローチって、ちょっと変わってる――半透明の革で、ちょっと硬質な感じがするのです。鼈甲に似てるけど、やっぱり革、って云うか。うん、面白い。
でもって、寒いし(何か、2日から急に冷え込んだとか)大体見たしと云うことで、酒を回収して一旦ホテルに帰還。
沖田番の買った酒をあけ、ついでに保命酒と、昨日買っておいたブラックペッパー入りカマンベールチーズもあける。
保命酒はとにかく甘い! 流石姫のお好みの酒! でもって、葛根とかの香りもすごい。


「……俺、これ日本酒で割ってみまさァ」
「あ? 水か湯か炭酸で割るといいとか云ってなかったか?」
「それだと薄くなるじゃねェですかい! 日本酒なら、すくなくともアルコール分は薄まりませんからねェ」
「そこかよ……」


とは云え、実際に割ったのを飲んでみたら、これが中々飲み易くて良い! 甘さ控えめで生薬の香りも抑えられ、するすると飲めます。
葛根や丁子、杏仁なんかが入っているせいか、ちょっと身体もぽかぽかしてきます。薬効成分の説明書き読んだら、結構貧血にいいのとかが入ってるし(※薬事法で規制されているようなものは入ってませんよー)。
あんまりするする入るんで、300mlの日本酒が空っぽに……


「……なくなっちまいましたねェ(淋)」
「意外に飲んじまったなァ」
「これで、夜の分はどうしたもんでしょうねェ……」
「……買いに行くか」


や、実は昼間沖田番が酒を買った時に、同じようなので、ガラス瓶にビー玉のはいった“チンパラガラス”と云う商品を、買うかどうか迷ったので――それを買えば、あと150mlばかり飲めるかな、と思ったのですよ。
「行きましょう!」と勢い込んで云われたはいいが、しかし、昼のお店に買いに行くのは、何となく恥ずかしい……だって、もう呑み乾しちゃったんだもん。
仕方がないので、うなぎ屋の近くにあったスーパー的なお店・平翠軒に――ここにも売ってたのを見てたからです。酒の肴とかが充実してます。ま、倉敷近辺のものだけ扱ってる、ってわけじゃあありませんが。
チンパラガラスとスモークチーズ、魚のおつまみ? もGETして、宿へ戻る。って云うか、酒買う時に沖田番が「こっちにちょっと多めに下さいよ」とか云ったので、お店の人に失笑されてましたよ……それはどうだ。


まったりとして、7時ごろにまた姉妹様と合流。
今回は、車で移動して、お好み焼き? っぽいお店に連れて行って戴く。
こっちのお好み焼き系は、自分で焼くんじゃなくて、焼き上がったのを持ってきてもらうのね。吃驚です。まァ確かに、あのボリュームじゃあ手前で焼くのは難しいでしょうけども。
今回は酒も入れず(まァ、昼間っからかっ食らってたけどね)、また打城丸の話で盛り上がりました。でもって、今後の勝手な予想をぶち上げたりとか……(まァ、案の定、そのラインから斜めのところに展開してくるわけなんですけども)
ほぼ閉店までまったりすごして、結局11時ごろにお別れしました。次は5月ですね! (笑)


部屋に戻り、風呂に入った後、また酒をかっ食らう――チンパラガラスも瞬殺でした。飲み終えた瓶は、お湯で洗って斜めに伏せておきます。明日までに乾かして、ちゃんと持って帰るのだ。
あ、平翠軒で買ったスモークチーズは、結構燻臭くってちょっと……やっぱ田渕屋のが全然美味しかったよ。量はあったけど、あの燻臭さは、なァ……
でもって、1時くらいにまた撃沈致しました。うむ。


† † † † †


最終日に続きます〜。