半色 三

児童虐待及び性的搾取のシーンが出てきます。閲覧の際は、自己責任でお願い致します。重盛お好きな方は、閲覧をお止めになった方が宜しいかと思われます……




 小冠者は、まったく状況がわかっていないようだった。
「な、何を……」
 と、狼狽した様子でこちらを見つめてくる。
「あ、貴方様は――」
遠江守重盛でございますよ、三郎冠者殿」
 うすく笑んで、名乗ってやる。
 小冠者の背後から、袍の紐を解きながら、
「私は、右中将成親」
 と、成親が名乗る。
「先だって、藤織部殿の局にてお会い致しましたの。憶えておいでか」
「は、はい……ですが、これ、は……」
 成親がすっかり袍を脱がせてしまい、袴の紐に手をかけるのを、小冠者は混乱した様子で止めようとした。
 その顎を捉えて、上向かせる。
 怯えた目のいろ、かすかに開いた唇がわなないている。あるいは、この小冠者は、これから己の身に降りかかることを勘づいてもいるのだろうか。
「そなたが、一の院のご寵愛を受けておいでと聞き及びましたもので」
 重盛はうっすらと笑みかける。
「ならば、同じ院のご寵愛を受けるものとして、それがいかなることかをお教え致しておくべきかと思いましてな」
 云いながら、単衣のあわせ目から掌をすべりこませる。
 指先に触れる、すべらかな肌――子どもの、まだやわらかく、瑞々しい肌だ。
「――嫉ましいのぅ……」
 成親が呟くのが聞こえた。
 単衣の下で、重盛のものでない掌が蠢く。
「このようにわかく、やわい肌……院も、これでは容易く御心を奪われておしまいになりましょう……」
 巧みな愛撫に、細い身体がひくりと震える。
「は、っあ、ッ……な、なに……ィッ」
「嫉ましいのぅ……」
 そう云って、成親は、細い首筋を喰んだ。
 単衣のあわせがはだけ、白い肌の上を、大きな掌が玩弄するように滑るのが見え。
 次の瞬間、重盛の裡なる獣が目醒めた。
「ほんに、嫉ましい……」
 呟きながら、薄明かりにさらされた小冠者の胸許に歯を立てる。
 喰らってやりたい。この細い身体を、めちゃくちゃにしてやりたい。
 痛みと怖れにかのけぞる身体、狩り出される獲物のよう。
「や、いや、です――どうぞ、止め……ッ!」
「そのようなことが、院にとおると思うてか?」
 云いながら、やわい肌に爪を立てる。
遠江殿、徒に怯えさせるようなことを云わずとも……」
 含み笑いをしながら、成親が、下袴の中へと手をしのびこませてゆく。
 途端に、小冠者は身体を引きつらせ、伸び上がってその手から逃れようとした。
「あ、あ、……いや、いや、だ……!」
「われらふたり、おのこを如何にして籠絡致せばよいかなど、重々存じておりましょうに」
「いや、いやです……い、やぁッ……」
 打ち震える細い身体を押さえつけ、腰を高く上げさせる。
「ほんに、まだ稚き菊の花よ」
 その蕾を弄りながら、成親は呟く。
「この菊を散らすかと思えば……ふふ、何やら猛々しき心地になって参りますの」
「や、いや、痛……!」
 身をよじり声を上げる小冠者に、苛、とした心持ちにさせられる。
「お静かになされよ」
 と云いながら、口をふさぐものを探した指先に、触れたはあの半色の小裂。
 重盛は、それを小冠者の口腔へと押しこんでやった。
 小裂に声を吸い取られ、悲鳴はくぐもり小さくなる。
「よい様でございますな」
 菊座を弄られ、苦鳴をこぼす小冠者の姿を、重盛は冷ややかな、けれど確かに猛るまなざしで見下ろした。
 半色と同じ、端のもの――それは、己ではなしに、この小冠者であるべきだった。
 そうとも、源氏などにおくれをとってなるものか――それも、皇胤と云っても端も端の、河内源氏の裔などに。
 支配してくれよう、このような小冠者のひとりやふたり――己の前に這いつくばらせ、涙とともに憐みを乞い願わせてくれよう。己こそが狩人であり、小冠者は駆られる小鹿でもあるのだと、思い知れ、その身をもって。
 熱く冷たい笑みを浮かべ、小さく震える小冠者を見下ろしてやる。
「――こなたに相応しい色よ」
 その、口に含んだ小裂の色は。
 ――この色のように、端のものとなるが良い。
 組み伏せられ、犯されて、武辺のものの矜持を折られてしまうが良い。
 ――この小冠者ごときに。
 己の存在をおびやかされてなどなるものか。
 砕かれてしまえ、無垢な顔などできぬほど、打ちのめされ、魂果ててしまえ。
 抗おうとする細いかいなを、重盛はひとまとめにして床に押さえつけた。
 小冠者の顔から色が失せ、いっぱいに見開かれた両の眼からは、澄んだ雫が滴り落ちる。
「お覚悟めされよ」
 昏い愉悦を覚えながら、重盛は云って、その顎を指先でかるく捉えた。
 次の瞬間、
「――……ッ……!!」
 小冠者の顎が浮き、雫がさらにあふれて落ちた。
「……きつう、ござりまするよ……!」
 その肉の楔を突き立てていた成親が、苦痛と快楽の半ばした声で呻きを上げた。
「あまり、怯えさせておしまいになったゆえ……ゆるめ、溶かし解してさし上げねば……」
 こちらとても悦い思いはできませぬ、と云いながら、かれはなおも腰を押し進めた。とは云え、その顔にはいかにも苦しさが滲んでいる。
 なるほど、小冠者が身体をこわばらせているが故に、奥深くまで入れることが適わぬのか。
「――なれば」
 重盛はついと手を伸ばし、稚い牡へ指を絡ませた。そのままそっと扱いてやれば、
「……!!」
 ひくん、と細い身体が震えを見せる。
 その機を逃さず、
「っ、くっ……!」
 成親が腰を進めてゆく。
「……!! ……っ、……!!!」
 小冠者の頬をとめどなく濡らす、澄んだ水の滴り。
「……すっかり入りましたな」
 やがて、吐息のように成親が云った。その声には、明らかに征服の悦びが滲んでいた。
 獲物は、玉鉾に刺し貫かれ、身体を引きつらせているばかり。ひくひくと上下する喉からは、定かならぬ呻きがこぼれてはいるが、それとても、噛まされた半色の小裂に吸い取られ、聞きとることも難しいような有様だ。
 さながら、射ぬかれた狩場の兎――猟犬に弄られるのを、されるがままにあるがごとくに。
「――さて、動きまするぞ」
 成親は云って、押しつけていた腰をいっぱいに引き、
「っ……――っっっ……!!」
 再び最奥までも突き入れる。
 小冠者の背がしなり、両の脚が、逃れようと床を掻く。
 それを許さず、成親は、二度、三度と菊花を穿った
 突き入れられ、また引きずり出されるその毎に、白い頬から露が散る。
 獲物の悲鳴が聞きたくなって、重盛は、色の失せた唇から、半色の小裂を取り去ってやった。
「……ゃ――っや、いや、ぁ、ぁ、ぁ……」
 細い声が、拒む言葉をのせようとして果たせず、意味のない音ばかりをこぼしている。
 顔色は白く、唇は青く――その貌に浮かぶは、ただ恐ればかりだ。
 成親は舌なめずりをせんばかり、思うさま小冠者を揺さぶり、やがて大きく胴震いして、その内奥に逐情した。
「――悦うございましたぞ」
 ややあって、小冠者の裡から己自身を引きずり出し、成親は満足げにそう云った。青臭いにおいが、局の中に広がった。
 小冠者は、真っ青で震えながらも、何とか逃げ道を探すかのようだ。
 ――腰も立たぬだろうに。
 這いずるように逃げをうつ、その様を、だが重盛が許そうはずはない。
「……まだでございまするぞ」
 云いながら、その腕を取り、ぐいとこちらへ引き寄せる。
 小冠者は心底怯えた風で、がむしゃらに抗う様を見せてくる。
 だが、震えるばかりの細腕で、何ほどの抵抗ができようか。
「私のお相手もして戴かのうてはな」
「い、厭……!!」
 かちかちと、小さく歯の鳴る音。
 真っ青な貌、震える身体、今にも魂消えてしまうような。
 だが、許すものか――壊してくれる、二度とふたたび、己の前に立てぬよう。
「厭、厭、厭……いや、ァッ……!!」
「埒もない」
 押さえつける、犬に躾をするように、頭を床へ、腰を高く。
 己の牡をまさぐり出せば、それは既に充分な猛りをみせ、小冠者を穿つのを待ち侘びていた。
「は、は、は……」
 牡とともに、己の心も猛ってゆく。
 獣だ、犬が、狼が、小さな兎を噛み裂くように、己も小冠者を噛み裂いてやる。
 猛りを菊花に押しあてて、そのまま一息に挿し貫く。
「ッ、ヒ……!!」
 押さえつけた身体が小さく跳ねる、それを眺め下ろす心根が、ますます猛り、昂ってゆく。
 穿つ、穿つ、穿つ。穿つところから二つに裂けよとばかりに、深く、深く、強く、強く、くり返し、くり返し。
「や、っ、ァ、――や、ぁ、ぁ、ぁ、……」
 か細い悲鳴を聞きながら、獣の呼気が、唇からこぼれ落ちる。
 引き裂け、引き裂け、喰らえ、喰らえ――その怯える魂までも。
 気がつけば、成親が、小冠者の唇をふさいでいた。その楔が、色を失った唇を侵し尽くす。
「――遠江殿」
 艶めく朱唇が、重盛を呼ぶ。
 そこへ、かれは噛みつくように唇を重ねた。
 ともに、小冠者を深く穿ちながら――己の力、犯すものとしての力を感じ、その力を振るうことに酔い痴れる。その陶酔をわかちあい、確かめ合う、獣同士の口づけ。
「――ふ」
 成親が笑う。
「ふは、ははは、ははははは……!」
 傍から見れば、その様は狂態ともとれただろう。
 だが、そうではない。これは儀式だ――重盛と成親が、これから先も院の近臣として、一致してことにあたってゆくのだと、それを確かめるための儀式なのだ。
 とりあえずは――この小冠者と云う“敵”を退けるための。
 当の稚い“敵”は、もはや抗うこともできず、二頭の獣に揺さぶられるばかり。
 それをよいことに、重盛たちは、小さな獲物を思うさま蹂躙した。
 やがて、獣の刻が過ぎ――小冠者がまったく気を失って、それでようやっと、二人は獲物を貪るのをやめた。
 小冠者の細い身体は、犯し尽くされて転がされている。涙と、男の精とにまみれ、ぐったりと倒れ伏している。手折られた若枝、引き裂かれた兎のごとくに。
「――やれ、この始末をつけねばなりますまいな」
 成親が、溜息とともに云う。
「然様でございますな」
 よし心を壊し尽くしたとても、身体は、そうは見えぬ態につくろってやらねばならぬ。
 この所業を、決して他にさとられてはならぬ。さもなくば、重盛たちは身の破滅だ。院の寵愛を受けるやも知れぬ小冠者ひとりを、大の大人が二人がかりで仕置きしたなど。
 重盛と成親は、小冠者の身を鄭重に拭い、精を裡より掻き出してやり、元のように袍を着せかけてやった。髪のほつれ、冠の歪みも直してやり、泣き濡れた顔の他には、この狼藉の跡など見えぬように。
「――さて、これで良い」
 ほとんど元と変わらぬように見える小冠者を横たえて、成親は満足げに微笑んだ。
 衣と冠をつけて目を閉じたその姿は、ふと眠りこんでしまったかのようにも見える。
「朝になれば、誰ぞ見つけるものがありましょう」
 重盛は、そう云って踵を返しかけ――ふと、爪先にあたったやわらかなものに、足許へとまなざしを向けた。
「……これは」
 それは、あの半色の小裂――小冠者の声を封じるためにその口に押しこみ、その後、うちやったままにしていたものか。
 拾い上げ、懐にしまおうとして、ふと気を変じる。
 もはや、この色は己の持つべき色ではない。端物となるべきこの小冠者にこそ、相応しい色ではなかったか。
 重盛は、小裂を丁寧に畳み、小冠者の懐に押しこんでやった。
 ――この色を見る毎に、今宵のことを思い出すが良い。
 貪られ、引き裂かれ、喰らい尽されるべきものであると、この小裂を見る毎に、幾たびも思い知れば良い。
遠江殿、参りましょうぞ」
 成親の声に、
「今」
 と応えを返す。
 この後は、己の館か成親の館へ赴いて、ふたりで酒でも酌み交わすとしよう。
 この先の“敵”をひとり退けた、その祝いをふたりでしよう。
 そしてまた、小冠者が二度と己の前に立ちはだからぬよう、その願をかけることも。
 横たわる小冠者に最後の一瞥をくれてやり、重盛は、成親のあとを追って局を出た。


† † † † †


鎌倉(っつーか源平)話、続き。
初の折り畳み記事!


えーと、まァ、今回はぶっちゃけエロではなく、虐待っつーかむしろ私刑的な?
これはまァ、夢で見たあたりですので、重盛スキーの方は見ないで下さいねー、って、ここで書いても無駄か……
あ、うっかりしてて、前回まで、成親の官職を“右大将”とか書いてましたが――正解は“右中将”でございました。メモしてたのに、って何度目だオイ。メモの意味ねェ……(汗)


しかし、11歳(今の数え方で云えば)の子どもが、10歳くらい年上の大人の男二人によってたかって、って、やっぱ怖いですよ。体格差考えたら、逃げられないもん、どうやったって。
こう云う意識があったら、大きくなって体格差逆転した後だって、やっぱ怖いまんまだと思うな――理屈じゃなくて、刷り込まれちゃうところってあるんだと思います。
だから、こないだの夜の闇の彼方で重盛に遭遇した時に、うっかり(夢の中では、こっちの方が体格もよく腕っぷしも強いのに)逃げ出しちゃったりするんですよ。あーもー、重盛にはホント会いたくないわー。


しかし、この手の児童虐待的あれやこれや、実は今までに3回ほど書いてる(まァ、どれも二次創作でですけどね)のですが、そう云えば“やってる側”視点で書くのって、これがはじめてだ――子ども相手でなければ、ややDVっぽいシーンは書いてるんですが(で、まわりから“Mだよね”って云われたりするわけです)。
うーん、まァ、視点が重盛だからかどうか、今回はちょっと、怖さとか支配欲とか征服感とか、イマイチくっきり書けてないような気がします……ヤるside=重盛と一体化できないカンジと云うか。
この分だと、佐殿視点の「秘色」も、怖さ半減なんだろうな――でも、正直、夢でのあの怖さをもう一度感じながら書くってのは、ちょっとかなり無理な気がする――鉄とかD.Qとかだと出来たんだけど(あ、でもD.Qは、兄貴の方では完遂できなかったなァ)。
まァまァ、「秘色」をちゃんと書けるかどうかは、この話を無事に完結させてからだろうけどね……
あ、ちなみにこの「半色」自体は、あと3章程度で完結する予定ですよ。


でもって。
前の項で「聖武天皇に興味が」とか云ってましたが、案の定、聖徳太子にも飛び火しました。や、何か「日本霊異記」で“聖武天皇は、聖徳太子の生まれ変わり”って話があるとのことだったのでね。
実際には、聖武天皇のことも調べ中なのでアレですが、聖徳太子も資料がない――や、トンデモ本まで含めれば、聖武天皇より全然本は出てるんですけども、普通の伝記的なものとかがね……「聖徳太子蘇我馬子だった」とか、どんだけトンデモ? ってのは、もりっと出てますよね……虚構説もありますしね……
対する聖武天皇は、中公文庫の「日本の歴史」ではノイローゼ扱いで、かなりしょんぼり……面白かったのは、PHP文庫の『鬼の帝 聖武天皇の謎』(関裕二)でしたが、聖武天皇の人物把握はあれでいいとしても、藤原氏のバックグラウンドや天皇家の相克についてはかなりトンデモっぽいので、『彷徨の王権 聖武天皇』(角川選書)や『帝王聖武』(講談社選書メチエ)などの天皇家観と合わせてみて、それっぽい聖武天皇観を作ってみようかなー、と。


ところで、岩波新書の『聖徳太子』を読んでいて見つけたのですが――“聖徳太子の生まれ変わり”、実は聖武天皇だけじゃなかったっぽい。
それが何と、藤原道長! ははは、こりゃすげェ! っつーか、手にした権力の強大さと、仏教に対する信仰の篤さ、でそう称されたらしい(「栄花物語」らしいですよ)ようなのですが。
逆に追いかけてって(道長聖武聖徳太子)太子にいきついた人間としては、何となく生ぬるく笑えてなりません。
しかしこれで本当に(以下略)なら、鬼→伊達の殿→先生→佐殿→御堂関白殿→聖武天皇聖徳太子、と云う(あ、年代順に云えば逆か)ラインになるわけですね。これで1400年前、と。
さァて、次はどこなのかしらねェ……(とりあえず、もう日本はなかろう)


とりあえず、この項終了。
次は、多分ルネサンス