秋の宮島行 その2

と云うわけで、行ってきました安芸の宮島、2日目。
お暇と心の余裕がおありの方は、下からどうぞ〜。


2日目の朝は、4時前にスタート。
何がしたかったって、干潮時の大鳥居の下をくぐりたい! と云う……結論から云うと、駄目でしたが。や、何しろ暗い上に足許がアオコで滑って、危ないこと極まりなく。お宿で貸してくれた懐中電灯一本では、とてもとても鳥居の下まで行けそうもないカンジでした……ははははは。
でもでも、未明の宮島の空は真っ暗で、三等星とか四等星とか見えそうなカンジでした。あんなすごい星空見たの、何年ぶりかな――大学の何かで野尻湖方面行った時以来の満天の星。オリオンとか昴とか、すごくはっきり見えました。ああ云うのもいいなー。あと、小学校の時に、すごい夜更かししてやった天体観測とか。東京じゃあ見れない空だよねェ。
夜明け前(東京より日の出が遅いし)で、鹿もお休み中ぽいカンジだったのですが、潮の引いた浜に、うごめく小さな影――


「……あれ、また狸ですかい」
「……っぽいなァ。何やってんだ」
「蟹でも捕って喰ってんじゃあねェですかい」


……穴熊です(笑)。
穴熊は、夜目にもあらわな警戒感でこちらを見、やがて夜陰(?)にまぎれて消えていきました。


「……仕方がねェ、宿に帰るか」
「拝観できんのァ、6時半からですしねェ」
「……俺ァ、もう一眠りするぜ」
「俺もそうしまさァ」


……ってわけで、宿に戻って一眠り。ほぼ1時間半後に目醒め、再び厳島神社へ。


えー、朝一だから人が少ない、かと思いきや、いきなりきゃわきゃわ、わいわいと騒がしい声が。
えーと、何、昨今の高校生ってな、朝も早からお参りコースなのかい?


「……若いですねェ(欠伸)」
「まったくだなァ(欠伸)」


と云うやや年寄ふたり、ぞろぞろと若者にまぎれて中へ入ります。チケット売ってくれたの、昨日「また明日お願いします」って云ったにーさんだったよ……


えー、干潮が4時ごろだったので、6時半の厳島は、当然水が引いております。何しろ、大鳥居の、下はくぐれないけど、脇までは歩いていけるくらいな引き潮っぷり。まァ、徐々に満ち潮になってきてますが、しかし、まだしばらくは引いてるよね。
そんな早朝の社殿の中を、ちんたらと歩きます。
何かこう、末社もあるんだけど、普通の神社と違って同じ建物内にある感じなので、どの末社が格上で、どの末社が格下なのか、いまいちつかみづらいカンジ……っつーか、そもそも厳島の本宮(?)の御神体が、この島そのもの(清盛がこういう御社にする前は、宮島口の方にある遙拝所からお参りしてて、こっちは禁足地だったという噂)って段階で、末社も何もないんでしょうけどね。
とにかくお参りして、でもって社務所でお守りを――沖田番は家に神衣守り(だっけ?)を、私は砂守りと、あと平家納経函(?)のストラップを、それぞれGet。
しかし、


「ストラップいっぱいつけてんなァ、浮気性なんですってさァ」


……って!
ああ、五月蠅ェなァ、そうだよ浮気性だよ、幕末書いてんのに、飛鳥天平平安源平室町ルネサンス戦国江戸と、全然ストイックにやってねェよ、くそ! と、暴れたくなりましたよ!!
とりあえず、沖田番の毛並みを逆毛にしてみる――


「あ、何すんですか、あんた、やめなせェよ!!!」


とじたばたするのに溜飲を下げ、再び境内(?)散策。
厳島神社には、海上能舞台があり、演能が催されることもあるらしい――舞楽の舞台は、本宮っつーか本社の前のちょっと高くなってるあれがそうらしいんですが。
ちょうど観阿弥世阿弥音阿弥あたりに引っかかってるので、能舞台もガン見+写真撮りまくり。ちゃんと橋掛りも鏡の間(って昔は云ったんだろうか……)もあるのですが、ここで演能となると、観客席のキャパってさァ……随分小さいよね、回廊の上だけだろうからね。


かるく見学を終了して、宿に戻り、朝ご飯を戴く。
バイキング形式で、施設は古めなのですが、ご飯は美味しかった――十穀米と白米が選べたので、迷わず十穀米! にしました、が、ちょっと水気が多かったかな……もうすこし水少な目の方が美味しかったと思いました、が、おかずはおおむね美味。玉子焼きをその場で焼いてくれてるのですが、ジューシーで美味しかった♥ 他のおかずも良かったですよ。
で、満腹満足後、最後のお風呂に入り(誰もいなかったので、ちょっと窓を開け、瀬戸内の朝の風景を眺めながらの風呂)、その後、荷物をまとめてチェックアウト。


でもって、次のお宿・岩惣へ。荷物を預けてから遊びに行こうという肚。
ちなみに岩惣は、ちょうど厳島神社の若干山寄り、紅葉谷公園内に建つ老舗のお宿です。
多分、格式は宮島の中で一番高いんじゃないかな――ロビーには、俊輔=博文と東郷平八郎、それから広島最後のお殿様の書がかけられています。建物も(部分的に)非常に古く、風情のある感じ+隅々まで気配りの届いてるカンジ。
もちろん部屋には入れない(何しろ10時くらいだし)ので、荷物を預かってもらって、散策に出発です。
紅葉谷は、けっこう葉が色づいてはいました、が、イマイチ色が綺麗じゃない――この夏の猛暑のお蔭で、葉の組織が傷んでいるのだとか。ちょっと残念……まァ、紅葉が見れただけでもよしとするべきか。


でもって。
今日は、弥山に登るのだと心に決めてました。
何があるってわけでもない(……いや、そうでもないか)のですが、とりあえず登っておきたかったのです。
っても、山頂近くまではロープウェーが通ってるので、そうそう大したことにはならない、はずだったのですが……
紅葉谷公園を抜けて、まずは小さなロープウェー(8人乗り)で榧谷駅へ、そこからは30人乗りの大きなかごで獅子岩駅に到着。所要時間は約20分、片道¥1,000-往復は¥1,800-でございます。
晴れてはいたのですが、何故か海上はぼんやりと霞がかかったような状態で、行きかう船も、隣りの島々も、見えるか見えないかと云うような有様。まァまァ、ヤマウルシの紅葉はばっちり見えましたがね。
獅子岩駅から弥山展望台までは、1.5kmほど歩きます――山道を。
これが結構ハードでして、歩いても歩いてもまだつかない! 貧血改善したはずなのに息が切れる! 弥山は標高535m、そんなに高い山ではないんですが、結構アップダウンがあり、道も舗装なんかされてないので、お出かけの際は、ちゃんと山道を歩ける靴が宜しいです。ヒールは駄目(そう云う私はaravonのウォーキングシューズ、沖田番はスニーカーでした。これくらいならいけます)。
どうやら弥山は、その昔空海が修行の場にしていたそうで、山頂近くにはいくつかのお堂が建ち、空海が点したとか云う“きえずの火”を守る霊火堂もあります。
まァ、確かに修行の場だよね、ここ――結構キツいもん。
でもって、噂の霊火堂に到着。“これで火が消えてたら面白いよねー”とか云いながら登っていったわけですが、実際についてみると、火の赤は見えず、白い煙がもうもうとしてる――えーと、よもや本当に消えたとか……?


さすがに何かこう、アレなので、そそくさと本堂にお参りして、さらに上へ。いやまァ、1200年まったく消えてないってことはないとおもうので(山の上だし、ねェ?)、まァ何とかなったでしょう、って云うか、消えてなかったんだよね……?
ともかく先へ。
途中に点々とある石仏(小さい)を拝みながら歩きます。うん、ホントに修行の場だ。
でもって、大きな岩がたくさん!
何だったか誰だったかに「弥山の頂上には、神さまがおりる岩があるんだよ」と云う話を聞いていたのですが、何かこう、そう云う巨石信仰がわかる気がするような、すごく大きく、なお且つ平らな岩が、あっちにもこっちにもありました。うむ、確かに神さまがおりて舞を舞いそうな岩だった。
でもって、さらに上がっていくと、ようやく展望台が! この辺で12時――麓から1時間以上かかってないか?
ちょっと小腹が空いたので、展望台にある店で、カップラーメンを戴く――¥400-。沖田番はホットコーヒーを。
高いけど、これが山の上の醍醐味ですよ! 昔高校時代に、富士山の頂上で食べたサッポロ一番(味噌味)も¥400-だったけど(あの時は、クラスメート4人で一杯を食べた)、あれも美味しかったもんなァ――富士山の頂上は寒かったしね! (7月下旬でしたが) そう云うのってありますよね、値段とかじゃないの。
「いつもこの時期は、もっと遠くまではっきり見えるんだけどね」と、お店のおじさんは云ってましたが――確かに春の海みたい。ここからの景色も煙るようです。山の紅葉は結構はっきり見えるんだけどねェ。


で、ちょっと休憩後、山を下ることに。
高倉天皇、じゃない、上皇か、が見たと云う白糸の滝に向かって、大聖院コースと云う登山道を、下へ。
登山道は3本ありまして、一番西の大元コース(宮島水族館の裏? の大元公園に出る)、真ん中の大聖院コース、ロープウェーに近い紅葉谷コースとあるのですが、大聖院コースは、中程度のコースらしい(地図では、大元コースが約2時間、大聖院コースが約2時間〜1時間半、紅葉谷コースが約1時間半、となってます)。
展望台から干満岩(海の干満によって、水が溢れたり乾いたりすると云う不思議な岩。水は塩味がするそうな)の脇を通り、大日堂にお参りし、山門跡を抜けたところで登山道に入ります。
これが結構……いや、登ってくる人が多い! が、道自体は整備されてる方ですが(大元コースは、分岐の道が細かったので、多分整備度も低いのではないかと思われ)、途中で道が崩れてて迂回路に入らされたり何だり、中々ハードな道です。っつーか、結構前の台風で、大規模な山肌の崩落があったっぽく、その跡が土の色も生々しいカンジで、またね……自然の猛威を感じました。瀬戸内って、割と穏やかなイメージなんですが(鞆の浦の海とか)、やっぱりそれだけでもないよね、当然だけど。


えー、結構下っていくのに、白糸の滝が見えないよ――賽の河原ってどこだ、あずま屋ってどこだ。
とか云ってると、かなり下になって、やっとあずま屋らしきところに到着、って云うか、あの、大聖院の太鼓の音がめっちゃ聞こえてたんですけどさっきから! この地図(廿日市市役所観光課作成)距離感が間違ってる!
とか云いながら行き着いた白糸の滝は、ホントに麓の方にありました。っつーか、麓から上がった方が全然近かったんじゃないの、ここ! ……行き会った登りのひとたちは、あの地図の距離感で考えてて「もうちょっと」とか云いながら歩いてたんだろうなァ……遠いよ!
しかし、白糸の滝は、ホントに糸のような滝でした。岩がごろごろしてたので、あるいはここも、例の台風のせいですごいことになってたのかも知れませんが。
ところで、結局“御幸岩”ってどれだったんでしょうか。滝の近くのあの大岩? 謎のまま麓へ。
何か、ずっと下ってばかりだったので、立ち止まると膝が笑うんですが。ヤヴァい、歳か! しかも左膝が特に――歩き方が変なので、右より左で身体を支えがちなんですが……そんなこんながもろにきたカンジ……ちょ、明日以降の筋肉痛が怖いわ……


大聖院はするっとスルーで、厳島神社方面へ。途中大願寺(第二次長州征伐時、勝さんが長州の広澤真臣と会談したところ)へお参り(しかし、それっぽい標識とかなかったよ?)、それから表参道商店街へ――遅いお昼(っつーかおやつ?)を食べに。
まずは紅葉堂で揚げもみじを。実は朝一発めにも食べてました(てへ)。ここの揚げもみじは美味しいです、特にチーズ! 他所のも食べたけど、やっぱりここ。ふわさくで美味! うはうはしながら戴きます。
でもって、次は沖田番のリクで牡蠣屋へ。ここでは生牡蠣と牡蠣のオイル漬を戴く。旨。私はひとりで白ワイン(グラス)を。だって、水分が欲しい&こういうのは酒……!
食べ終わったら、昨日のみせんへ移動、こっちでは焼き牡蠣。日本酒一合と焼き牡蠣3個のセット“元就セット”を戴く。それと野望のにぎり天。沖田番は牡蠣入り、私はチーズ&ベーコン(確か)。どっちも旨々。牡蠣好きの沖田番に一個やる。
と、店のお父さん(っつーかおじいさん――多分ご家族でやっておられる)が、ちょっとお酒を足してくれた……、す、すみません(汗)。
いろいろとお話を聞きつつ、牡蠣を貪り食らう沖田番……まァ、確かにここの焼き牡蠣美味しいもんな。また来よう。うん。
とか云いつつ、お店を後に。


えー、4時くらいになって、また厳島神社内に。一日2回かよ、と思いつつ、そう云えばと山南役用にお守り&大鳥居ストラップを買う。
また写真を撮りまくり、引き潮の大鳥居近くまで。
でもって、沖田番は境内に侵入し、能舞台を間近から撮ってました……いいのかな……私もついてったけどね……まァ、立ち入り禁止にはなってなかったけど……いいんだろう、多分。
で、千畳閣(ホントは豊国神社)へ。秀吉が清盛に対抗して建てたのだそうですが、死んで建築がストップ、そのまんまにされてるがらんとした建物です。
上司に「絵馬がいっぱいあるけど、それ以外は何にもない」と云われてたとおりでした。絵馬自体は結構面白いのがありましたが、確かにそんなに人はこないよね。
沖田番はまたそこでも写真を撮りまくり。ものがないだけに、違う面白い写真が撮れるようで、磨いた床に映る柱の影や、広い縁と香欄のとりあわせなんかを撮っていた模様。
でもって、5時過ぎたので、お宿に戻ります。


えー、岩惣は、やっぱり宮島では一番格式のあるお宿の模様。
皇太子時代の昭和天皇とか、北白川宮とか、首相時代の俊輔も来てますね。
新館はまァ今時の建物ですが、旧館の方は明治〜大正期の建物で、中々風情があります。掛物とかお花とか、結構手をかけてるカンジ。
私どもは、新館の5階のお部屋。コンパクトですが居心地良く、設備機器なんかはわりと新しいものを使ってるカンジです。そう云うとこ大事。
係のねえさんは初々しいカンジで、これまた好感度↑。
説明を受け、とりあえず風呂! ここは温泉なのですよ。
っても、“温”泉と云うよりは、冷泉を温めてると云うカンジか――ラドンが含まれてて、お肌がすべすべになるそうな。
しかし、ここのお宿、外国人率が高い――いや、アジア系ではなく、金持ってそうな白人系? ちょうど団体さんが入ってたようですが、それにしても、朝食の席(翌朝です)で、外国人が半分以上だったのには驚きました。ちなみに、若い人間だけ、ってのは、私どもと、カップルがもう一組(片方は外国人)くらいで、あとは中高年……いや、我々だって見た目ほどは若くないんですがね!
元々が冷泉だからか、露天もありましたが、そっちはちょっとぬるかった……
が、まァ、すべすべになって、上がり。
さァて飯めし〜。


えー、岩惣も部屋食でございますね。
何と、ちゃんとお品書き(っつーか本日のメニュー的な)がついてますよ!
ご飯はね――うん、美味しかったとは思うのですが、私的には、うちのおかんの作るお客様料理と味付けがそっくりで、何かイマイチ外で食べてるカンジが致しませんでした……うん、食材の味を生かした薄味のお料理でございました。美味しいのは美味しいんだよ……個人的なアレコレでビミョーなだけでね……
っつーか、先附・前八寸・お造里・焼物・煮物・進肴・強肴・食事・汁・水菓子、と進むきっちりした会席料理でございましたよ。
またしても烏賊三州味噌漬とかが美味しく、お酒が進みました――っても、もったいないからちみちみ飲んでましたけどね(苦笑)。
そうそう、このお酒がね! 「弥山」ではない方地酒(名前失念)の、金箔入りのを戴いたのですが、金箔が桜のかたちで、なお且つ蕊とかの型が押してある! ちっさいのに! と云う代物でした。飲んじゃうの勿体なかった……飲みましたが。
あ、ここのご飯は松茸ご飯でした――ここも牡蠣はなかった、が、進肴が広島牛のフィレステーキでした。美味しかったですよ♥


満腹満足後、布団を敷いて戴き(プロの技)、また風呂へ。
ぬくぬくして、露天に行くと、川(が風呂のすぐ横に)向こうに鹿が! 寝床に帰るとこらしい。ここ、公園の中だもんなァ。
また内風呂であったまって、部屋でごろごろしながら昨日の残りの酒を戴く。
流石に疲れた、ので、昨日より早く撃沈。やっぱ、下りが多かったとは云え、山道2kmくらいってのはキツいわ……


さてさて、この日は終了(また長い……)。
最終日に続きます〜。