「空海と密教美術」展。

ってわけで、行ってきました、国立博物館
空海密教美術」展ですよ! 早売りのペアチケット2組買ったもん! うち3枚は、自分で使うのですよ、ふふ……


えー、前日が呑み会(ベテラン組の黒い女子会……)だったので、沖田番との待ち合わせは1時。
が、少々血の気が足りず、20分ほど遅刻……自転車のろのろしかこげなかったからね……


しかし、何とかかんとか上野には2時に到着。
そのまま、まずは国立西洋美術館、「古代ギリシャ」展へ――チケットがあったので。
えーと、もちろんギリシャ彫刻が中心なのですが、結構ローマ期の模刻が展示されてました。意外にギリシャ期の彫刻(not神像)は小さいのが多く、等身大以上のサイズの「人間」の彫刻ってのは、実はローマ期に作られたものが多い模様。
例の円盤投げの像とかも、やっぱりローマ期の模刻なのですが――あれって、ティヴォリのヴィッラ・アドリアーナ、つまりはハドリアヌス帝の別荘の装飾(って云うか)に使われていたものなのだそうですが。あれ、多分新しくモデル立てて彫ってるよ! 筋肉の浮き上がり方とかが、生のモデル見て彫ってるカンジだもん。多分、あれは姿勢だけギリシャ彫刻なんだと思う。
ヴィーナス像なんかもローマ期の模刻がありましたが、やっぱローマの方が、何と云うか洗練されてるカンジですね。ギリシャはもっと素朴な感じだ。マニエリスム的な身体のねじれは、やっぱローマ期の産物なんだろうなァ――例のラオコーン(は、ヴァチカンにありますよ)とかそうですけどね。
あ、そう云えば、ギリシャ彫刻の一つが、何故かストリジル(例の『テル.マエ・ロマ.エ』に出てくる垢すり用金属へら――ギリシャ語読みは“ストリジル”じゃなかった)を持ってました。なるほど、ギリシャ期からあの垢すりべらなんだ、とちょっと感心しましたよ……
っつーか、最終巻でいいので、『テル.マエ・ロマ.エ』、限定版にストリジルつけてくれないかなァ……¥3,000-くらいだったら、普通に買うんだけど……どうですかのう?


で、3時くらいにいよいよ国立博物館へ!
しかし、今上野公園は整備工事中で、西洋美術館からは科学博物館前を通らないといけないカンジになってます。
平日の15時ともなると、そんなに人は多くもなかった――あと、「古代ギリシャ」展と違って、中学生とかの団体さんもいなかったしね!
とりあえず第一部は書画がメイン! 今回の目玉は、阿闍梨24歳の作とか云う『聾瞽指帰』と『灌頂暦名』、例の飛白体の書かれている『真言七祖像』、あと最澄筆の『請来目録』ですかね!
『聾瞽指帰』、結構のちの字と違ってるなァと思っていたのですが――やっぱ阿闍梨の字だ! “生”と“如”の字のくせがまったく後年と一緒! あと、阿闍梨の字って、他の人の写経とかの字と違って、飽きたり、墨を足したり、この辺で一辺止めたな、ってのがわかったりして面白い(笑)。字がガタガタしてたり、いきなり行書っぽくなってたり、こう、作家の生原見てる感じと云うか(笑)。人に見せる意識なかったろ、って思いますね!
それに較べると、対照的なのが最澄の『請来目録』。もう、きっちり字のくせが一緒。同じ覚書でも、阿闍梨の『灌頂暦名』(“泰範”の文字に生ぬるく……)とは大違い(笑)。でもって、字に力がない――王羲之風と云うのかな、筆先でさらさら書いてるカンジ。あれを“端整”(by司馬遼)と云うかどうかは、好みの問題、か……でも、別に巧くはないと思う。阿闍梨の字だって巧いわけじゃなく、「あれは天才の字」(by沖田番)だそうですが。
まァしかし、飛白体の“龍”(龍猛の図画に書かれてる)とか、『大日経疏』の抜き書きとかの“如”“法”とかの字が、いろいろ見覚えのある書き方で面白かったです。
これで『風信帖』(今期は展示されておりません)とか見たら、更に笑えるんでしょうねェ……


あ、あと今回のメイン(ホントに!)、唐の皇帝から下賜された? 金の念珠! 写真で見た感じでは、金の珠(非常に細かい細工がされている)の大きさを6mm前後? と思っていたのですが――え! これって4〜4.5mmじゃないの!? って云う細かさでした。これは確かに皇帝の下賜品じゃないと無理だろう!
してみると、よもや皇帝から2つも念珠を下賜されるとは思えないので、もうひとつの菩提樹の数珠(今回の展示品ではありません)は、多分恵果阿闍梨からのものだったんじゃないかと思うのですが……どうでしょうかね?
忘れてた、阿闍梨請来の密教法具、五鈷杵と五鈷鈴が意外に大きくて吃驚……! イメージ的には、五鈷杵とか20cm足らずかなーとか思っていたのですが、五鈷鈴が25.8cm、五鈷杵も24cm、金剛盤が横34.8cmなのだそうで……(『芸術新潮』に依る)
今、実際に使われてるのや、市販されてるのよりも大きいカンジが。しかも、やっぱり金工が優れてたんだろうなァ、ってカンジの、優美なラインで♥ ああ云う五鈷杵、お守りに欲しいですね。
あと、請来品じゃなかったけど、独鈷杵とか、先端が凄く尖ってて、いかにも武器でしたわ……


で、途中でちょっと物販を覗き見して(しかし、まだ買わない)、さていよいよ第二部へ。
第二部は仏像中心。
薬師如来像とか五大明王像とか、いろいろありましたが、やっぱり圧巻は、東寺の立体曼陀羅の一部再現! 帝釈天がイケメンなのはもちろんですが、梵天の造型が結構好みだなァと――あ、鵞鳥がね。あと、大威徳明王降三世明王とかも好き。東寺の仏像は、全体的にバランスが綺麗ですね! 実際の東寺の立体曼陀羅も見てみたいものだと思いましたが、しかし、今回のこれはこれで、阿闍梨の構想をある程度反映してる仕上がりだったんじゃなかろうかと思います。


とりあえず、今回は(←……)満足して、私は図録と『聾瞽指帰』のチケットホルダーと『風信帖』の一筆箋を、沖田番は今回の限定グッズのトートと麩のしぐれ煮を、それぞれGetして会場を出ました。
その後は、駅のところでかるくお茶→中野で晩飯→さらにカフェでお茶、ときて、帰ったのは10時くらいでしたよ……


† † † † †


そう云えば、この展覧会がはじまる前に、トッパン印刷博物館で『空海の贈り物』展もやってたんだよね――もちろん行ったのですが、結構前に行って、入れ替え(があったのです)後は行かずじまいだったわ……
通勤途中駅で降りればいいのですが、何しろ徒歩20分ほど(飯田橋だからね……)なので、仕事後だと気力が尽きてることが多くってね、最近……
でもまァ、結構面白かったです。阿闍梨の、と云うよりは、高野版と云う版木で印刷された経典とか、版木そのものの展示だったのですが。
でもって、こないだ「理趣経」買った松本日進堂さんは、多分その“高野版”の版元なんだろうなァ、と思いましたです。そう云えば、ウィンドウに版木とかディスプレイしてあったもんね。
多分また秋に高野山へ行く(今度は沖田番や山南役も一緒の予定)ので、もう一度よく見てみようと思います。


ところで、展示の中に『蘇悉地儀軌契印図』と云うのがあったのですが――あれが例の『蘇悉地経』のアレコレだとしたら、やっぱ一部を構成するのは難しいんじゃないのか、『蘇悉地経』。
っつーか、下っ端大師こと円珍が、マジで台密改造に行き詰って、ぺこーんとしちゃってます……大丈夫か、下っ端!
かわりに意気軒昂(?)なのが、智泉、真雅、真然、真済、真榮etc.の真言宗組。阿闍梨の凄さを再認識したようで、「阿闍梨、神、神!!!」とかやってて、下っ端大師を凹ましてます……
気の毒は気の毒なんだけど、今更“もういいよ”とか云うと、ますます傷つけそうな感じだし、どうしたもんかしら……どうしよう?


でもって、今月の『芸術新潮』も阿闍梨! とか思ってたら、『別冊太陽』もだったんですが……おい、どっちも、ついこないだ法然親鸞の御遠忌の特集組んでたじゃん! って気分でいっぱいに。
っつーか、今年の真言宗の攻勢は、本当に何なんだろうと思わずにはいられません……来月の『大法輪』も阿闍梨ですよ……『別冊太陽』は(図録より高いので)買いませんが、『大法輪』……中身によっては買っちゃうかも……


ってわけで、この項終了で。この後の展示品に関しては、追々坊主の項で書くだろう、と思います。
ってわけで、今度こそルネサンスで!